
-山下議員
発言の機会を得ましたので、日本共産党市議員団の一員として質問いたします。
最初の質問は、都市再生緊急整備地域における再開発についてです。
7月2日、都市再生特別措置法に基づき、金沢駅から武蔵、南町、香林坊、片町にいたる都心軸エリアが都市再生緊急整備地域として指定されました。今議会の補正予算案には緊急整備地域に係る補助金が多数盛り込まれており、そのほか税制優遇や規制緩和を受け、民間による再開発がすすんでいくとみられます。
日本経済新聞が2023年夏、「ゆがむ官製都市」と題して、「民需なき官製再開発広がる」など、暴走する再開発事業にメスをいれる記事を連載しました。地方都市において、需要のない巨大な再開発ビルの一部を行政が買い取り、補助金とフロア購入で公的資金が二重投入され再開発が成り立っている構図を明らかしています。
市長は昨年の12月に続き、今年8月にも近鉄不動産本社を訪問し、旧都ホテル跡地の早期再開発を要請されています。いったい何を懇談し、何を約束してきたのか、明らかにしてください。
-村山市長
金沢都ホテル跡地については、6年半以上更地の状態が続いております。県都金沢市の玄関口に位置する駅前の開発については、まちの発展に大きな影響を及ぼすということから、私自ら近鉄不動産に出向いて、地域整備方針に沿った早期の開発を要望してきたものであります。倉橋社長からは、北陸一のブランドとなる複合施設を実現するため、現在ハード・ソフト両面ともに検討を深めているということ、できるだけ早く都市再生特別地区に関する協議を始めることができればとの考えが示されました。今後、これまで以上に近鉄不動産との情報共有等を図るべく、新たに相互の実務者レベルでの具体的な協議を強く要請したところであります。
-山下議員
2024年2月に策定された未来共創計画は、1985年策定の「金沢市基本構想」に掲げられた3つの理念「市民主体」「豊かな人間環境の構築」「国際的文化産業都市」を引き続き継承していくとしています。市民のための市民によるまちづくりを推進するとうたう「市民主体」が、この都市再生緊急整備地域における都市再生特別地区での開発や市街地再開発事業において保障されているのでしょうか。
都市計画は本来、市民、住民の生活向上に資するものであり、住民参加、住民合意のもと行われるべきです。市民の声を聞き反映させていくことが重要だと考えますが、市長の認識を伺います。
-村山市長
市民主体のまちづくりを進めることが重要であるということはもちろん認識しております。本市ではこれまでも、独自のまちづくり条例に基づいて、一定規模の開発を行う事業者に対し近隣住民等からの意見への適切な対応を講じさせるとともに、事業者と住民との協議の調整を図ってきたところであります。また、市街地再開発事業におきまして、都市計画法に基づいて事業計画案の検討段階で住民意見を反映するための説明会を開催するとともに、先般、都市計画審議会で了承が得られた都市再生特別地区の運用指針におきましても、事業計画の提案に先立って十分な住民説明会を行うこと、また、住民意見を事業内容に反映させることを事業者の責任として明示をしております。
-山下議員
金沢市は、区域ごとに景観形成方針と基準を定め、市民とともに歴史と文化が息づくまちの景観を大切にしてきました。金沢駅周辺は高さ規制があり、60mを超える建物を建築できないことになっています。しかし都市再生特別地区となれば、高さ規制を除外した開発が可能となる整備地域方針が示されています。
高さ規制の除外には市民的合意がなく、民間事業者の儲ける開発のために景観や文化を損なうことがあってはなりません。市民とともに育んできた景観を守ることこそが行政の責任であると考えますが、見解を伺います。
-村山市長
先般、都市計画審議会において了承されました運用指針におきまして、地域整備方針に即した民間開発を促すための庁内横断組織を設けることといたしました。今後、都市再生特別地区の都市計画決定に向けましては、この中で事業計画の妥当性について判断することとしておりますほか、あわせて景観審議会や都市計画審議会にお諮りをしながら、周辺環境との調和や本市固有の都市景観に配慮した事業計画となるように誘導していくこととしております。事業者から具体的な事業計画の提案があった際には、歴史的まちなみや豊かな自然環境を保全しながら開発を進めてきた本市のまちづくりの規範である保全と開発の調和の考え方を大切にしながら、事業者との協議を重ねてまいりたいと存じます。
-山下議員
市長は昨日、市政を担う決意を聞かれ、「歴史と文化を未来につないでいく」と答弁されました。そうであるなら、やはり市民とともに築いてきたまちづくりの規制をしっかりと守っていくことを強く求めたいと思います。
市民からは、旧都ホテル跡地は高層マンション中心の建物が建設され投資物件になるだけではないかと懸念の声が寄せられてます。首都圏を中心に超高層マンションの建設を伴う再開発が進むなかで、投機目的での住宅取得や転売によって住宅価格高騰が引き起こされています。いまや地方都市も例外ではありません。市民の居住環境や地域の持続性を守るためにも、居住目的でない住宅投資や転売目的の取引防止など、不動産投機に対する指針や規制が必要だと考えますが、見解を伺います。
-村山市長
マンション取引に対する制限につきましては、開発事業者やマンション購入者の権利などを踏まえた慎重な対応が必要であると考えております。今のところ市として指針等を定める予定はありませんけれども、居住実態のない住戸の増加による住環境の悪化、また施設の管理・運営に支障が生じることなどの懸念から、首都圏の一部の自治体において開発事業者等に対して複数物件の購入禁止、また一定期間の転売制限などについて要請しているということは承知をしております。今後、他の自治体の動向を注視していきたいと思います。
-山下議員
本来再開発は、公共の福祉に資するべきでありますので、開発事業者の利益追求の手段とならないよう求めたいと思います。
老朽化した建物の更新やにぎわいの創出、地域活性化を望む声は、都心軸周辺に限らず市内各地に存在しています。金沢市全体の面積のうち、わずか0.13%にあたる59haのこの区域に対し、巨額な予算が集中することに市民的理解が得られるのでしょうか。
過去、都心軸エリアにおける14の市街地再開発事業では、総事業費1,771億円、補助金は451億円にものぼります。都市再生緊急整備地域における民間開発事業に対する補助金の投入や税控除措置は、市財政へ極めて大きく影響することが予想されます。今後、市民福祉や医療、教育、防災などの基礎的予算が圧迫される懸念は拭えません。持続可能な財政運営と市民生活の安定をいかに両立させるのか、具体的な見解を求めます。
-村山市長
今回、駅東都心軸として指定をされたこの地区については、金沢のまちの玄関口でもあり、そして何よりまちなかの賑わいを創出する大切な区域だというようにとらえております。この都市再生緊急整備地域の開発を促進していくため、今回、一定規模以上の再整備にかかる解体等に対する助成など、様々な支援措置を講じることといたしましたが、こうした大規模な開発には一定の期間を要するという中で、必要となる経費は事前の審査等である程度把握できるものであります。他の施策に大きな影響を及ぼすことのないよう、毎年度の予算編成の中で対応してまいります。
-山下議員
大型再開発を優先するあまり、市民の福祉予算が削られるよということがあってはなりません。市民の暮らしを守るという自治体本来の役割を踏まえ、再整備のあり方を再考すべきと求めて、次の質問にうつります。
子どもの権利を保障する施策の充実について伺います。
長期休み明けは、子どもの自殺が増加する傾向にあるといわれています。8月20日、夏休み明けを控えた子どもや保護者に向けて、文部科学大臣が~不安や悩みがあったら話してみよう~とメッセージを公表しました。教育長も2学期の開始にあたって、児童生徒・保護者・教職員それぞれに向けてメッセージを発信されています。このタイミングでメッセージを発信した背景と目的についてお聞かせください。
-野口教育長
長期休業明けは、対人関係の再構築や、学校生活への適応、また学業に対する悩みなど、こどもたちが不安や負担に感じる要因が様々に重なり合う時期であります。また全国的にも、不登校児童生徒数が増加する傾向にありますし、今ほど議員がお触れになられましたように自殺者の数も増加する傾向にあります。こうしたことから、2学期の始業にあたりまして、児童生徒、保護者、教職員に対してメッセージを発信いたしました。
-山下議員
児童生徒、保護者、教職員それぞれの実情と照らしたとき、そのメッセージがどのように受け止められているかということも考えます。「ひとりで悩まず、先生や家族、友だちに話してみてください」という呼びかけが安心につながったという声がある一方で、「自分の思いを言葉にすることが難しく、話しを聞くよと言われることさえ苦しい」という声や、教員からは学校現場は多忙を極め、「自分らしさを大切にしたいけど難しい」との声も聞かれました。すでに学校を休みがちだった生徒は「やっぱり学校ありきで逃げ場がない」と話していました。
メッセージでは、子どもたちが安全・安心な学校生活を送ることができるよう全力を尽くすと述べていますが、児童生徒、教職員双方に対する心のケアや支援について、どのような取り組みを行っているのか伺います。
-野口教育長
各学校におきましては、日々の様子や端末を活用した心の健康観察を通じて、ひとりひとりの状況把握に努めております。体調や表情の変化、遅刻・欠席等で気になる児童生徒がいないか、注意深く観察をして、必要に応じてスクールカウンセラーなどによるカウンセリングに繋げております。加えまして、小学校4年生、小学校6年生、中学校1年生、中学校2年生を対象に、毎年2回のWEBQUアンケートを実施し、児童生徒の状態を多角的に把握することで、学級内の良好な人間関係の構築に繋げております。また学校教育は教職員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであり、教職員のメンタルヘルスは極めて重要であると捉えています。そのため毎年ストレスチェックを確実に実施して、その状況把握に努め、必要に応じてカウンセリングに繋げております。そうしたほか、校内の業務分担を見直すなどの対応も行っております。
-山下議員
また今回のメッセージがどのように届いて受け止められているかということも、ぜひ今後見ていっていただきたいと思います。
次に性教育の充実についてお聞きします。
2023年の12月議会でも、性教育について取り上げ、子どもたちが人間らしく健康で幸せに生きていくための力を育む性教育の必要性を求めました。
近年、教職員による児童生徒への性加害・性暴力の報道が続いています。子どもの人権が踏みにじられる、決して許されない行為です。今回の性加害事件を受けて、文科省は7月1日に「児童生徒性暴力等の防止等に関する教師の服務規律の確保の徹底について」通知を出しました。
金沢市においても、子どもたちの安心・安全な教育環境の確保は喫緊の課題だと考えます。そこで金沢市では、どのような対策をとっていくのかお聞かせください。
-野口教育長
今般の国からの通知を受けて、各学校には性暴力等を未然に防ぐ観点から、児童生徒と教師が2人だけになるということを回避することや、更衣室等の定期的な点検を行うこと等の措置に加え、改めて児童生徒への性暴力を防止するための校内研修を実施するように通知したところでございます。本市におきましては、この通知の内容に加え、性暴力等を含めた服務規律の徹底について、今後も校長会議や学校訪問等を通して指導するとともに、不祥事防止に向けての校内研修の実施や安全な学習環境の整備について、各学校に周知してまいります。
-山下議員
ぜひ適切な教育環境の整備をお願いしたいと思います。そしてまた、子どもたちが安心して相談できる専門的な知識を持った相談体制の強化もあわせて求めておきます。
性加害事件を受けて、一般社団法人 人間と性教育研究協議会が8月21日、「子どもたちに性暴力のない安心・安全な教育環境を確保するために」と題する声明文を発表しました。声明では、おとなや教職員自身が、性を人権として学ぶ機会を保障されないままいることや、インターネットを中心に氾濫する性差別的・暴力的な歪んだ性情報が子どもへの性暴力を招いていることを指摘しています。あわせて、子どもたちの人権を守るためには、包括的性教育を学ぶ機会を保障することを強く求めています。そこでお聞きします。現在、教職員に対する性教育研修は、どのような内容が実施されているのでしょうか。また、包括的性教育について研修に組み込む検討をされているのか伺います。
-野口教育長
これまでも人権教育の一環として、多様な性のあり方の尊重などについて研修を実施しております。仰せの包括的性教育は、身体の発達にとどまらず、人間関係や自己肯定感、またジェンダー平等や性の多様性など、性を巡る幅広いテーマを含んでおりますことから、引き続き教職員研修において重要な課題として取り組んでまいります。
-山下議員
加害者臨床で、性犯罪加害者の治療や再犯防止プログラムに携わってきた斉藤章佳氏は、「最初の加害をおこさせないためには、アプローチの一つとして包括的性教育が重要だ」と語っています。加害者自身も、性的同意や性的自己決定権など「親や学校からも教わらなかった」「もしちゃんと学んでいたら事件を起こさなかったかもしれない。もっと早く知りたかった」と語っています。
日本では、性に関する教育が体や生殖の仕組み中心であり、学習指導要領には「はどめ規定」があることで、受精に至る過程や妊娠の経過を取り扱わないとしています。しかし、子どもたちを被害者にも加害者にもせず守るためには、人権を軸とした人間関係や性の多様性、ジェンダー平等など、より広い内容を学ぶ国際標準の包括的性教育の学びが不可欠だと考えます。
包括的性教育の内容を市独自に教育課程へ反映させる考えはあるか伺います。
-野口教育長
本市におきましては、健康教育推進プラン2024に基づき、包括的性教育を教育課程に反映し、性に関する不安や悩みへの対処の仕方や、性被害の防止や対処などについて理解を深められるように、健康教育全体計画を作成して、性に関する指導の充実を図っております。加えて毎年、性の問題について教職員や保護者への啓発、または児童生徒への保健教育の充実を目的に、助産師などの専門家を派遣いたしております。引き続き発達段階に応じて包括的性教育の内容を学ぶことができるように、性に関する指導の充実を図ってまいります。
-山下議員
ぜひ、子どもの人権を守るという視点で、この性教育に取り組んでいただきたいと思います。
次に、従来の健康保険証の発行終了とマイナ保険証について伺います。
政府は今年12月2日以降、従来の健康保険証の利用を停止して、いわゆるマイナ保険証への一本化を決めています。しかし現状は、マイナ保険証の利用率は伸びず、次々と例外措置が設けられています。その結果、医療機関で使用される証明書が、顔認証付きカード、資格確認書、スマートフォン提示、マイナポータルのPDFなど、現在少なくとも9種類に及ぶという異常な事態です。
厚労省は、2026年3月末までは有効期限の切れた保険証や資格情報のお知らせのみでも受診できると通知しました。しかし、周知が十分とは言えず、有効期限が切れたので受診できないのではないか、どの証明書を見せればいいのかなど、誤解や不安が生じ、受診をためらう事例も報告されています。そこで、金沢市は国保加入者に対して、どのように厚労省の通知を周知しているのか明らかにしてください。
-南市民局長
マイナ保険証の移行に向けましては、納入通知書等を送付する際に制度改正をお知らせするチラシを同封するほか、新聞広報や市のホームページ、公式LINEなどを通じて広く市民への周知を図ってきたところでございます。期限切れの保険証や資格情報のお知らせのみによる受診につきましては、国は制度移行期における暫定的な対応であり、医療機関等を受診する際はあくまでマイナ保険証または資格確認書の提示が基本であるとしておりますことから、市として積極的な周知までは行っておりません。
-山下議員
厚労省は、マイナ保険証を持っていてもその利用が困難な方には、申請によって資格確認書を発行するとしています。申請すれば交付されるということですが、対象者の範囲が不明瞭であるとの指摘もあります。丁寧な周知と対応が必要だと考えますが、市としてどのように市民に情報提供を行い、相談や申請に対応しているのか伺います。
-南市民局長
要介護などでマイナンバーカードでの受診が困難な方がいらっしゃいます。そんな方にはマイナ保険証を所有していても申請により資格確認書を交付しておりまして、介護サービスの事業所や障害福祉サービスの事業所などに対しては申請手続等の案内を行い、周知をしてきたところでございます。また、市民や施設関係者からの相談や申請に対しては、市独自のマイナ保険証コールセンターを設置するなど、丁寧な対応を行っているところでございます。
-山下議員
制度の複雑化により、医療機関では窓口対応が煩雑となり、実務・費用面での負担が増加しています。9月19日から一部の医療機関や薬局で、スマートフォンによる保険証提示を開始するとしていますが、事前の実証事業では利用者が1%未満にとどまり、さらなる現場の混乱が懸念されます。医療へのアクセスの公平性を損なう制度はただちに中止するべきだと考えます。金沢市として、従来の保険証の復活を国に強く求めるべきではないですか。見解を伺います。
-村山市長
マイナ保険証を利用することによって、診療時に過去の健診結果、また薬剤情報も共有できます。適切な医療に繋がるという市民の利便性が高まることから、国に従来の保険証を復活するよう求めることは考えておりません。
-山下議員
この制度の複雑化によって、受診できるかどうかが個人の理解力や医療機関の設備に左右される現状は、平等に保障されるべき受療権を侵害していると言えます。金沢市として、医療機関への支援や、市民への丁寧な説明と相談体制の強化も合わせて求めたいと思います。
次に自動車運転免許証自主返納についてうかがいます。
近年、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題として注目されています。大きな事故につながる前に免許証を返納したいけれど、病院や買い物などに移動手段がなくなる不安と不便さで悩む高齢者やその家族から相談が寄せられています。
金沢市は全国の傾向と同様に、75歳以上の免許証保有者数は年々増加している中で、自主返納者数は年間800人余りと横ばいです。自主返納者支援制度の新規利用者は5年前と比較して2倍となっていますが、新規自主返納者の約4割にとどまっています。自主返納者数と支援制度の利用者数が伸びない状況を、どのように分析しているのかうかがいます。
-村角都市政策局長
75歳以上の高齢者の運転免許証の自主返納者数については、コロナ禍では一旦減少したものの、その後再び増加傾向に転じているところでございます。高齢者運転免許証自主返納支援制度の利用者数につきましても、コロナ禍を経て再び増加に転じることに加えまして、新規の申請者数も年々増加してきておりますことから、さらなる制度の周知に努めていきたいと考えております。
-山下議員
新規の支援制度の利用者が増加しないひとつに、自主返納する年齢と支援制度の対象年齢に開きがあることが要因ではないかと考えます。警視庁の発表によると、2024年の運転免許証申請取消件数は全国で42万件を超え、うち75歳以上が約26万件、75歳未満も約16万件にのぼります。この件数からみても、高齢者の自主返納とあわせた移動支援の必要性は75歳以上に限らず、75歳未満にも広く存在していると言えるのではないでしょうか。
金沢市の支援制度の対象年齢を現行の75歳以上から引き下げ、より多くの高齢者が安心して免許証を自主返納できる環境を整えるべきだと考えますがいかがですか。
-村山市長
運転免許証の更新時や交通違反時には、認知機能検査が義務付けられている、これの年齢が75歳以上となっております。それをもとに本制度も同様の対象年齢としているものでありまして、対象年齢の引き下げは考えておりません。
-山下議員
小松市では、支援制度の対象を原則65歳以上としており、65歳未満であっても障害のある方や病気等の心身の事情により自主返納された方も対象にしています。実際に運転ができなくなった事情を抱えた市民のニーズにかなった要件だと考えます。
金沢市においても対象年齢の拡充はもちろん、こうした心身の事情による自主返納者も対象となるよう拡充を求めますが、見解を伺います。
-村山市長
現行のこの支援制度ですけれども、あくまで75歳以上の高齢者の運転免許証自主返納を支援するということを目的としたものでありまして、対象者の拡大は考えてはおりません。
-山下議員
金沢市の免許証自主返納の支援策である「高齢者公共交通乗車券購入助成制度」は、バス・鉄道の定期券、回数券等の購入助成となっています。自主返納した高齢者からは、バス停や駅が遠く、移動手段としてタクシーを利用したいという声も多く寄せられています。こうしたニーズに応えるためにも、支援内容にタクシー利用を加える検討を求めますが、いかがですか。
-村山市長
この制度についてですけれども、免許証返納後の高齢者の日常生活における移動を支援するということだけではなく、バスや鉄道を利用した買い物などの継続的な外出機会を創出することで健康増進を図ることも目的としております。その効果がタクシー利用については限定的となりますので、タクシー利用への助成については考えておりません。
-山下議員
ぜひ実態をみて、対象の拡充を今後検討していただきたいというふうに思います。公共交通の利便性向上や、コミュニティバスの充実、徒歩や自転車で移動しやすいインフラ整備ということも、こういう交通弱者を支える環境整備としては必要だと思います。このことも引き続き求めていきたいと思います。
最後は、戦後80年、金沢市平和都市宣言40周年の節目にあたり、金沢市として平和の尊さをどのように次世代に継承していくのかという点で、数点伺います。
金沢市は、広島市および金沢市遺族連合会と共に、8月7日から15日まで「ヒロシマ原爆・平和展」を開催しました。展示では、被爆に関する資料のほか、金沢と広島に住むお二人による被爆体験の講話も行われました。市民のみなさんとともに、戦争や核兵器の恐ろしさ、悲惨さを知り、平和や命の大切さについて考える貴重な機会になったと捉えています。そこで、この企画展を通じて、市としてどのような役割を果たせたと考えているかお聞かせください。
-村山市長
この期間中ですけれども、延べ約2,500名の方々にご来場いただきました。新たに実施したVRゴーグルによる原爆被害等の疑似体験、私もさせていただきました。また被爆体験講話や体験談の朗読会などによって、原爆による悲惨な状況、また命の尊さを伝えることができたというように考えております。今回のヒロシマ原爆・平和展の開催を通じまして、改めて平和の尊さ、戦争の悲惨さを後世に伝えなければいけないということの思いを強くしたところであります。
-山下議員
今後も同様の平和事業を継続・発展させていく考えがあるのかもお聞かせください。
-村山市長
ヒロシマ原爆・平和展につきましては、共催となります広島市の意向を確認する必要はありますけれども、こうした周年記念事業として今後も継続していきたいと考えております。なお、毎年夏に開催しております「ヒロシマ・ナガサキ原爆と人間」ポスター展につきましては、明年度以降も継続して実施していく予定であります。今後展示物の更新や関連図書の設置などについて検討してまいりたいと存じます。
-山下議員
戦争の記録や記憶を次世代に継承するうえで、やはり被害だけではなく加害の歴史を伝えることも重要だと考えます。7月末に石川県庁で開催された旧陸軍731部隊のパネル展を見てきました。731部隊は、非人道的な人体実験を含む重大な加害の歴史を持ちます。部隊と関わりのあるここ金沢でも、この歴史に向き合う責任があるというふうに考えます。
近年、一部では歴史を歪めるような言説が広がっていますが、戦争における加害の責任を曖昧にすることはできません。過去の過ちを繰り返さないためにも、過去の事実を学び、平和の尊さについて考える機会をつくることは、自治体の重要な役割だと考えます。市民団体と連携して資料の展示や学習の場を設けるなど、戦争加害の歴史に向き合う取り組みを進めるべきだと考えますが、見解をうかがいます。
-村山市長
本市は今から40年前に平和都市宣言を行いました。この中では世界の人々と友好関係を深める中で、恒久平和に貢献をしていくことを宣言したものであります。この宣言に基づきまして引き続き平和の尊さと戦争の悲惨さを伝える取り組みに重点を置いて、周知・啓発を行っていきたいと考えております。
-山下議員
友好関係を深めるためにも、やはり過去の歴史に向き合う、そして私たちの加害の歴史に向き合うということは大変重要だと思います。改めて検討を求めたいと思います。
質問の最後は、核兵器廃絶についてです。
ヒロシマ原爆・平和展での市長の挨拶で、核兵器について一言も触れられなかったことは、たいへん残念でなりません。金沢市の平和都市宣言は、世界の恒久平和と核兵器の全面禁止・廃絶の実現に向けて不断の努力をしていくことを宣言しています。核兵器廃絶に対して、市長として明確な姿勢を示すことが求められていると考えます。
金沢市は、核兵器廃絶と世界の恒久平和の実現を目指す平和首長会議に2009年から加盟しています。現在、世界166カ国、8,516都市、日本では1,740都市がこの理念を共有しています。今年8月9日、長崎市で開かれた第13回国内加盟都市会議では、日本政府に対し、核兵器禁止条約への署名・批准と、来年の第1回核兵器禁止条約再検討会議へのオブザーバー参加を強く求める文書が採択されています。
加盟都市である金沢市も同様に、国に対して同様の働きかけを行うことを求めますが、市長の見解を伺います。
-村山市長
核兵器禁止条約への署名・批准等の国への要請につきまして、本市も加盟する平和首長会議の国内加盟都市会議としてこの要請を行ってまいりました。改めて市として直接要請する考えはありません。
-山下議員
2017年に国連総会で採択され、2021年1月に発効した核兵器の全面禁止・廃絶に向けた核兵器禁止条約に、唯一の戦争被爆国である日本はいまだ署名・批准していません。ですので、やはりこの平和首長会議に加盟をしている市長としても、この平和都市宣言をしている金沢市からも、明確な姿勢を示すことが必要だというふうに思います。改めてその必要性を求めて、私のすべての質問を終わります。