議会議案第2号 生活保護制度を後退させる改正法の撤回を求める意見書 提案説明
日本共産党金沢市議会議員 森尾 嘉昭
私は、日本共産党市議員団を代表してただ今上程されました議会議案第2号 生活保護を後退させる改正法の撤回を求める意見書の提案理由の説明を行います。
生活保護を受けている世帯は、157万世帯、受給者は、215万人となっています。その4割は、男女とも65歳以上の高齢者世帯です。そして、傷病世帯が多くを占めています。しかし、生活保護基準以下の生活にもかかわらず、多くは、生活保護を受けておらず、生活保護基準以下の生活者のうち、生活保護受給者の割合を示す生活保護の捕捉率は、日本の場合、約20%です。一方、ドイツや、イギリスでは、約90%です。日本の貧困化の実態を示しています。
にもかかわらず、国は、生活保護基準を削減し、この8月から3ヶ年で実施することに続き、今度は、制度を後退させる法改正を閣議決定し、現在、参議院で審議が続いています。
その内容は、保護の理由、資産及び、収入の状況などの事項を記載した申請書の提出義務づけや扶養義務者に対する報告など申請行為を遠ざける内容となっています。衆議院の段階で、「特別の事情があるとき」は、申請書の提出や書類の添付を要件としないこととする修正が加えられましたが、その判断は行政にゆだねられており、「原則は、書類の提出」と厚生労働大臣が答えています。結局、生活保護の申請要件が厳しくなり、申請者を窓口から閉め出す危険性が改めて指摘されています。そもそも、書面添付を生活保護申請の要件とすること自体が法の趣旨から逸脱するものです。
生活保護制度は、憲法25条に規定する健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する最後のセイフティーネットとされており、母子の餓死事件やあいつぐ孤立死など深刻な事態が起こっている中、より充実した制度としてその役割が発揮されることが求められています。
さらに、今年5月に国連の社会権規約委員会が日本の第3回定期報告書に関する総括所見の中で、生活保護の申請手続きを簡素化し、かつ申請者が尊厳を持って扱われる事を確保するための措置をとるよう勧告しています。
また、各県の弁護士会が反対声明を出しており、その中で、「今般の改正案は、違法な『水際作戦』を合法化するとともに、一層の萎縮的効果を及ぼすものであり、その結果、客観的に利用要件をみたしているにもかかわらず生活保護を利用することのできない要保護者が続出し、多数の自死・餓死・孤立死等の悲劇を招く恐れがある。これはわが国における生存権保障(憲法25条)を空文化させるものであって到底容認できない」と述べています。
以上のことから、この意見書は、国に対して、生存権の保障という生活保護制度の役割を大きく後退させる今回の法改正を撤回するよう求めるものです。
以上で提案説明を終わります。