2013年9月議会
議会議案第7号 生活困窮者自立支援法の制定を求める意見書
反対討論
日本共産党金沢市議会議員 広田 美代
議会議案第7号「生活困窮者自立支援法の制定を求める意見書」に日本共産党市議員団を代表して、反対討論を行います。
今年6月26日の通常国会では、生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案などが、安倍首相の参院予算委員会への出席拒否を理由に出された問責決議案が賛成多数で可決された影響で、廃案となりました。
政府が既に決めた保護費カットだけは残り、すでに215万人の生活保護利用者の生活を「削減」しています。
セットで出された生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案は民主党時代から続いている生活保護の役割を圧縮することを「前提」とした制度です。
不正受給への罰則強化や失業者らの就労・自立を支援するという名目ですが、実態は、違法な水際作戦の合法化と保護申請に対する一層の委縮策に他なりません。
そしてこの意見書にある「生活困窮者自立支援法」は、必須事業である自立相談支援事業と住宅確保給付金、自治体判断に任せる任意事業があります。その名の通り「自立」を支援するための法律ですが、ここでいう「自立」は「就労」に特化したものです。
生活困窮にいたる要因は人それぞれです。
「就労」という切り口から見える風景は、貧困や生活困窮という社会全体の大きな病巣を見渡すには、あまりに狭すぎます。
また、生活困窮にいたる原因は、必ずしも本人の資質や能力によったものではなく、雇用状況や労働環境、家族との関係や制度の不備などの「社会環境の問題」がとても大きいのです。
社会保障制度改革国民会議の報告書でも、『格差・貧困問題の解決を図るには、所得再分配の強化を図りつつ、経済政策、雇用政策、教育政策、地域政策、税制など様々な政策を連携させていくことが必要』と明記されています。
そういった問題に目を向けずに、「就労自立」という限定的なゴールを課すことは、生活困窮者の真の自立にはつながりません。
今必要なのは、限定的な「制度」を作ってお終いではなく、雇用政策、他の社会保障政策などの、さまざまな施策と連携し充実した、社会全体の「セーフティネット」を作っていくことではないでしょうか。
私たちが取り組むべきことは、まず「貧困」や「生活困窮」の実態と、その背景にあるさまざまな社会環境の問題について、現在おこなわれている以上にもっと調査・分析し、必要な施策はどういったものなのかを、専門家、支援者、当事者を含めた多種多様なメンバーによってより深く、かつ丁寧に考えていくことです。
「貧困」や「生活困窮」といった大きな問題に対して、いまこそ腰を据えて議論していかなければなりません。
本市の現状でも、全国同様、ケースワーカー1人当たりの受け持ち受給者が100名を超えており、職員のスキルや能力を充分に生かした対応ができているとは言えません。ケースワーカーの増員、特に専門スキルを持った方々を増やし、受給者ひとりひとりに丁寧に寄り添い支援できる体制や環境を構築すること。事例検討、研修を増やし、地域の関係機関や支援グループとも連携して、生活困窮者ひとりひとりにあった支援を行う取り組みが求められます。
このための財源や制度こそ国に求めるべきであり、生活保護手前でなんとかしようという限定的なこの制度には反対です。よって制度の制定を求めるこの意見書には賛成できません。