2014年3月議会 一般質問
日本共産党金沢市議会議員 森尾 嘉昭
私は、日本共産党市議員団の一人として以下質問致します。
最初の質問は、新幹線開業にあたって、市長は提案理由説明の中で「新幹線の開業効果を最大限に引き出していく」と述べました。その恩恵をだけが手にするのか。についてです。
3年前に、本市の商店街実態調査とその商店街に所属する商店にアンケート調査が行われ、その報告がされました。
市内にある35の商店街の組合長あるいは事務局長に対する調査の中で、新幹線開業による影響について、「観光客等の来街者が増加し商機が拡大する」との答えは10組合と29%にすぎませんでした。所属する商店の回答は、18%にとどまりました。東京等大都市との競争がきびしくなり、経営にマイナスの影響があるとの答えは、4%あり、報告書の中で、「新幹線開業に際して危機感を有する商店が一定数存在することがわかる」と述べています。
先日、いくつかの商店街を訪ね、お話を伺いました。昨年、36年間かけて完成した駅武蔵北地区再開発事業。その5つの再開発ビルの通り沿いにあるお店の店主は「人通りは少なく、新幹線開業まで、うちの店が持つかどうか」と深刻な顔で話されました。
市長!あなたが、新幹線開業と共に、金沢の顔となると述べた商店街通りです。駅前の老舗ホテルの裏通りにあった古くからの店が廃業し、すぐそばのパチンコ店が、飲食店に改装が進められています。まちの様子が大きく変わり、堀川地区では、住宅地まで飲食店が進出し、県外資本の出店が相次いでいます。
駅前別院通り商店街から横安江町商店街は、歯が抜けたどころか空き店舗の乱立状態です。ある靴店の店主は、「新幹線が来て、観光客が増えるかもしれんが、東京からわざわざ私の店に靴を買いに来るお客はおらんやろう。それに消費税増税があるし」と、もうあきらめ顔でした。
市長!あなたにはこうした実情と悲痛な声は、届いていないのでしようか。その見解を伺います。
新年度予算の中で、「核店舗誘致促進事業」として3千万円が計上され、都心軸に集客力のある大手セレクトショップや有名ブランド店を誘致するための補助制度が盛り込まれました。一方、苦境に立つ地域商店街に対する新たな対策は見当たりません。
駅前や武蔵にあるホテルは、すでに外資系の企業に経営が移り、内装などモデルチェンジを図るなど新幹線開業への対応が始まっています。駅西地区では、大手企業共同で、複合商業施設とホテルが来年4月に開業するとしています。さらに、本市世界の交流拠点都市・金沢の重点戦略計画の中には、駅西広場隣接地に外資系ホテルの誘致を打ち出しています。地元大手スーパーが倒産し、その店舗を県外の大手スーパーが買い取り、北陸三県での年間売り上げで、1千億円をめざすとしています。郊外では、大型専門店などの出店が続いています。
市長!新幹線の開業によって、その恩恵は、結局一握りの県外資本と外資系の企業が手にすることになりませんか。しかも、本市がその進出を支援し誘導しているではありませんか。多くの地元商店街と商店は置き去りとなり、存亡の危機を迎えています。
市長!あなたが述べた「新幹線の開業効果を最大限に引き出していく」とは、こうした姿なのですか。あなたは、外資系ホテルの進出まで『おもてなし』されるのですか。苦境に直面している地元商店街と商店に対する新たな支援策について改めて伺うものです。
質問の第二に、介護保険、要支援1、2の訪問、通所介護を市町村に移行する国の方針と対策についてです。
「医療難民」「介護難民」となって、生きていく居場所がないという「漂流高齢者」が増え、地域で安心して暮らし続けていくことが困難となる事態を迎えています。
安倍政権は、医療と介護をセットで制度の改悪をすすめ、徹底した予算削減を進めようとしています。
介護保険制度では、その内容の一つが「要支援1、2」の訪問介護と通所介護を介護保険から切り離し、市町村の地域支援事業に移行するというものです。
これについて、中央社会保障推進協議会が、全国市町村にアンケート調査を実施した結果、21都道府県、620の保険者から回答が寄せられ、その内容が報告されました。要支援1、2の利用者が受ける訪問介護、通所介護を市町村の地域支援事業に移行することについて、「可能」と答えたのは、16%にすぎませんでした。「不可能」が31%、「判断ができない」が40%にのぼりました。
訪問、通所介護は、介護保険の在宅サービスの中心であり、全国で310万人が利用し、その内、要支援1、2の方は、90万人となっています。
市長!こうした訪問、通所介護の介護サービスは、介護保険制度のもとで安心して受けられるようにするべきです。今回の要支援1、2の訪問、通所介護を市町村に移行するという国の方針をやめるよう求めるべきと考えますが、市長の見解を伺うものです。また、本市の訪問、通所介護の介護サービスの実態を明らかにしていただきたいと思います。
具体的に伺います。
第一に、介護保険サービスを利用するために必要な「要介護認定」を受けないよう誘導し、市町村の地域支援事業のサービスに流していく仕組みを導入しようとしている点です。
「要介護認定」は、訪問調査員が74項目の調査を行い、医師の意見書とともに、要介護度の認定を行っています。ところが、基本チェックリストによって、25項目の簡易な質問項目によって、市町村の地域支援事業に振り分けられることになります。本来「要支援」に該当する人までが認定からはずされることにつながり、認定を受ける権利の侵害にもなりかねません。
第二に、地域包括支援センターの果たす役割が大きく変貌しかねない点です。
地域で安心して暮らしていけるよう様々な支援と相談に対応し、必要な介護サービスの提供をマネージメントする役割を担っています。ところが、今度は、「要支援1、2」のような介護度の低い方々を市町村の地域支援事業へ振り分ける言わば「仕わけする」という役割を担うことになってしまいます。
第三に、国の財政措置が削減されることです。介護保険制度は、利用者に1割の自己負担を求め、保険財政は、半分が保険料。残り半分を国と地方自治体が担っています。今回、国の方針によって、「要支援1、2」の訪問介護と通所介護を介護保険から切り離し、市町村の地域支援事業に移行した場合、交付税による地方自治体への措置として一般財源化し、国の責任ある財政措置が後退してしまい、結局、事業だけでなく財源も地方自治体が請け負うことになりかねません。
市長!こうした点について具体的な見解を伺うものです。
質問の第三に、美大の移転と今後の運営の在り方について伺います。
市長は、提案理由説明のなかで、美大について「手狭で施設の老朽化がすすんでおり、金沢大学工学部跡地への移転整備を視野に新キャンパスのあり方について検討を開始したい」と述べました。
6年前の2008年に打ち出した「美大の改革プラン」では、その改革の方向性は、「ものづくりの精神とマネジメント能力を備えた未来社会を拓く人材養成」を掲げ、そのプランの中で、「建物の経年劣化への対応に加え、耐震化やユニバーサルデザイン化がもとめられる」と述べ、新たな施設整備として、総合工房、付属芸術資料館、情報メディア等の研究に関する設備機器の更新と充実、耐震化と人にやさしい建物へと改築する。付属図書館を図書・資料情報センターとして拡充するなど具体的な方向が示されています。
市長は、今回の美大の移転に当たって、どのような大学へと充実を図る考えなのか明らかにしていただきたいと思います。
市長!美大の設立経過からしても市民の参加と理解があってこそ大学の発展があります。もちろん、大学関係者、学生からも意見を取り入れなければなりません。今後の移転計画と内容の検討をどのように進めていかれるのかその見解を伺うものです。
4年前には、美大は、独立法人化されました。設立から掲げた美大の理念と大学運営は継承されているのか伺うものです。
美大は、昭和21年、戦後間もない時期に設立され、「美の創造を通して人類の平和に貢献する」ことを理想に掲げ、工芸美術の伝統の継承と保存育成をめざして創設されました。当初、美術・工芸の分野だけでしたが、デザインの分野を拡充し、さらに芸術専攻、大学院修士課程や博士後期課程を設けるなど幅を広げてきました。自由と創作への未来志向を持って接する市民の理解と支援があってこそ美大が存続し、発展してきたことはその歴史が物語っています。
そして、それは、大学運営が一部の独断専行型ではなく大学構成員の民主的な運営によってこそ保障され、発展するものです。
独立法人化がされ、4年が経過します。美大の中期計画の中では、その歴史と理念がどのように掲げられていますか。そして、大学の運営がすべての構成員によって民主的に進められる体制と機構となっていますか。
独立採算制だからと言って、大学にとって利益の上がる分野にだけ予算が振り向けたり、一部の勝手な予算執行などはあってはなりません。
そもそも、美大の設立は本市であり、今年度交付金として8億6千8百万余の予算を計上しており、本市としての責任があります。
市長から、美大のあり方と運営について、その見解を伺うものです。
質問の最後に、いじめの実態と対策、提案された二つの条例についてです。
「金沢市いじめアンケート」が報告されました。その内容を見ると、「いま、いじめられている」と答えた児童・生徒は、小学校で1586人、中学校で、178人。「今はないが、いじめられたことがある」と小学校で4973人、中学校で、902人が答えています。合わせると小中学校で約8千人が、いじめ体験を受けていることになります。これが氷山の一角だとするといじめの実態は、深刻です。
「どんなふうにいじめられましたか」の問いに小中学校ともに、「冷やかし、からかい」「仲間はずれ、無視」「遊ぶふりして叩かれる」などが多いと答えています。
教育長!今回のいじめアンケート調査を通して、いじめの実態についてどのように受け止めておられるのか伺います。
「いじめられた時どうしましたか」との問いに、「助けを求めた」との答えは小学校で12%、中学校で22%です。一方、「だまって我慢した」との答えは、小学校44%、中学校になると59%にのぼっています。いじめがあっても、だれにも、どこにも相談できず、じっと我慢しなければならない子どもたちの姿に胸が痛みます。
教育長!子どもたちに寄り添い、どんなささいな事でも見逃さず、風通しがよく、だれもが安心できる教育環境づくりが求められます。子どもたちの命と人権が守られ、学ぶことの喜びが分かち合えるために、教職員、保護者などが一丸となって、この問題に取り組み、教育的視点でその解決に当たらなければなりません。教育現場では沢山の課題があり、学校全体が日々の教育実践とスケジュールにおわれています。
本市教育委員会として、この問題が単なる解決すべき一つの課題だというのではなく、教育全体の中心的な課題として取り組むことが求められています。
教育長!本市のいじめ防止対策について、どのような位置づけと具体的方策を持って取り組んでいかれるのか明らかにしていただきたいと思います。
今議会に二つの条例が提案されています。いじめ対策連絡協議会の設置といじめ等対策委員会の設置にかかわるものです。
いずれも、いじめ防止対策推進法の中では、「置くことができる」とするもので必ずしも設置しなければならないものではありません。どのような考えから設置するのか。いじめ防止に向けた役割と取り組みにどのように関わるのか。市民の理解と合意が得られていると判断できるのか。伺いたいと思います。
日本弁護士会は、この点について、いくつかの提言を行っています。いじめ対策推進法について、「いじめが集団の構造的問題であるという視点や、まず原因を究明してこれに対処するという視点に欠けている」と指摘し、「いじめを行為の面からのみ捉えて、一方でいじめを受けた児童等には支援を強調し、他方でいじめを行った児童等には指導・懲戒・警察への通報など加害者的扱いが強調されている」と問題を指摘しています。
また、「いじめ問題対策連絡協議会」について「構成する者の例示の一つとして挙げられている『都道府県警察』については、いじめを行った児童等に対しても支援の観点が必要なことから、あくまでも教育的観点を優先し、連絡協議会が警察主導的なものにならないよう配慮することが必要である」として連絡協議会に弁護士会も加えるよう求めています。
こうした点について、市長並びに教育長から答弁を求めるものです。
いじめ対策委員会の構成と役割についてです。いじめ対策等に各方面からの英知を集めるとしていることから、その構成員には、心理・精神医学、福祉、法律などの関係者、弁護士から構成する必要があると考えるものです。
また、この委員会は、重大事態に際して、事実関係の調査を行う機関としています。各学校でも、調査を行い、さらに、この委員会が調査を行うとしたら、迅速な対応が取られないまま児童・生徒などが二度も三度も調査を受ける事につながりかねません。
重大事態に対して、学校や教育委員会が事実をかくしたりせず、しっかりした調査と教育的視点で解決にあたることが求められています。
この点についても、市長並びに教育長から見解を伺いまして、質問を終わります。