反対討論・金沢市議会・2014年10月
日本共産党金沢市議会議員 森尾嘉昭
私は、日本共産党市議員団を代表して討論を行います。わが党は、上程された議案 22件のうち、議案第32号平成26年度金沢市一般会計補正予算、議案第37号金沢市児童福祉法に基づく家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例制定について、及び議案第47号財産の処分について、以上の3件に反対であります。
その主な理由について述べます。
第一に、補正予算に計上された生活困窮者自立促進支援モデル事業費についてです。
生活保護法の一部を改正する法律及び生活困窮者自立支援法がいったん廃止になったものの、昨年12月に成立し、改正保護法が今年7月から、困窮者法は、来年4月から全面施行されることとなりました。
この二つの法は、憲法25条に基づいて定められ、最後のセイフテーネットである生活保護制度を大きく後退させるものだとして各方面から批判されたものです。中でも、生活保護の申請にあたって、扶養義務者などを記載した申請書の提出を義務付けるなどさまざまな条件を付けて申請を受理しないといういわゆる水際作戦と称する生活保護申請の抑制につながる内容となっているだけに重大です。そして、生活扶助基準が昨年から3年間で最大10%の引き下げが実施されています。生活困窮者自立支援法は、こうしたものと一体となったもので、生活保護を必要とする方が支援事業に誘導されて保護から遠ざけられたり、生活保護基準を下回る仕事でも「とりあえず就労」となり、生活保護から追い出しにつながりかねません。日本弁護士会からも、改善を図るべき点や懸念すべき点が指摘されています。
わが党は、こうした点から本市がそのモデル事業として進められることに反対であります。
第二に、泉小学校・泉中学校建設事業費についてです。
弥生小学校と野町小学校を統廃合して泉小学校とし、現在、旧野町小学校を使用しています。今度は、旧弥生小学校を壊し、隣の泉中学校を建て替え、新たな小中一貫校を新築するとしています。そして、今回、隣接する金沢大学の学生寮などの用地取得の話し合いをすすめ、可能とならば、新たに建設する小中一貫校の体育館などの利用を計画するとしています。
これまで指摘してきたように古くなった小中学校を新しくしてほしいとの要望を逆手にとって、二つの小学校を統廃合し、小中一貫校の建設へと一気に進めようというものです。統廃合した泉小学校は、児童数は500人を超え、一学年がほぼ3クラスとなり、教職員も40人を超えています。泉中学校と併せると1000人近くの児童生徒数を抱えることになります。幼児期を過ぎた小学生と思春期を迎えようとする中学生を小中一貫校と称して学ばせることには各方面から疑問の声が出されています。十分な理解と合意がないままのこうした統廃合と小中一貫校の建設には、賛成できません。
第三に、税総合オンラインシステム改修費についてです。
社会保障・税番号制度。いわゆるマイナンバー制度が具体化されようとしています。税金や保険料、社会保障給付の記録などを一元的に管理するとして、来年10月から、番号、氏名、住所、生年月日、性別が記載されたカードが配布され、16年には個人データーが入力され、住民税、固定資産税、国民健康保険料などの情報が管理される計画です。こうした情報がどのように利用されるのか。情報流出にならないのか。問題が指摘されています。
また、この制度は、個人のプライバシーに大きな影響を及ぼす恐れをがあるだけでなく、国が国民一人一人の情報を直接管理し、把握が可能となります。さらに、この制度が際限なく、拡大されると公的機関内で個人情報が自由に使え、民間業者においてこの制度の利用が進むなど重大な問題があります。
この制度の具体化するためのシステム導入は、国と地方で合わせて1兆円規模と言われています。本市でも新年度予算、今回の補正予算、来年度の予算計上を合わせると2億5千万円にのぼる事業費となるものです。まさに、IT企業の巨大市場となっていることは、誰のための事業なのか問われており、賛成できません。
次に、議案第37号は、子ども、子育て支援新制度に伴う条例制定で、小規模保育事業の配置基準を盛り込んだものです。
子ども、子育て支援新制度は、市町村が保育の実施に責任をもつ現在の保育制度をかえ、保育の市場化といわれる仕組みが導入され、その結果、保育料負担の増大、施設との直接契約、保育条件を切り下げる規制緩和が持ち込まれるなど保育水準の引き下げ、保育やこどもを儲けの対象にしてはならないとして批判が高まってきました。
小規模保育事業について、全員が保育士資格者であるA型、資格者は半数以上とするB型、資格を有しなくても、研修を受ければ事業を準用できるC型としており、施設要件の緩和と共に、保育士資格要件の緩和が打ち出されています。子どもの安全と保育の水準を確保するうえで、こうした規制緩和を持ち込む条例内容には反対であります。
議案第47号は、金沢森本インター工業団地第2期分譲の議案であります。
この工業団地のすぐ上には、金沢テクノパークがあります。280億円を投じ、先端産業を誘致するとして計画された工業団地です。最初の企業立地からまもなく20年が経過しますが、4分の1にあたる6区画8.5haが売れ残り、その面積は、東京ドーム約2個分に相当します。この7年間立地はゼロです。その売れ残った用地と同じ規模の面積を34億円の事業費を投じて造成し、企業の立地を進めているのがこの金沢森本インター工業団地です。そして、ここへの進出も大手企業が中心で、立地助成金と称して市民の税金で数億円が投入されます。わが党は、こうした事業には、賛成することはできません。大手企業中心の呼び込み型の企業誘致による産業政策から切り替え、地場の企業への振興策に力を注ぐことを改めて求めるものです。
次に、請願・陳情についてです。
請願第37号は、農業委員会、企業の農地所有、農協改革など「農業改革」に関する意見書の提出を求めるもので、農民運動石川県連合会の代表から提出されたものです。農業政策の基本を企業参入・進出に置くのではなく、家族農業を基本とし、それを支える諸制度の充実。地域コミュニティーの維持、協同組合を発展させることこそが重要だとして国に意見書を求めるもので、わが党は、賛成であります。
請願第38号は、政府による緊急の過剰米処理を求める意見書の提出を求めるもので、同じく農民運動石川県連合会の代表から提出されたものです。
「米作って飯くえねえ」と米価の暴落に農家は悲鳴と怒りの声を上げています。農協の概算金は、1俵・60キロあたり、3000円前後も下回り、石川のコシヒカリが60キロあたり、1万円です。ペットボトル1本分で計算すると67円です。水の半分の値段です。農家が他産業並みの労賃が実現できる価格は、農水省の調査でも1万6000円だとしていることからも深刻です。政府が安定供給と価格に責任をもたず、市場原理にまかせたための結果です。
こうしたコメの大暴落に対する対策を国に求めるもので、わが党は賛成であります。以上の二つの請願は、いずれも、付託された常任委員会で不採択されました。わが党は、この不採択に対して反対を表明し、討論を終わります。