反対討論・金沢市議会・2015年3月
日本共産党金沢市議会議員 森尾 嘉昭
私は、日本共産党市議員団を代表して討論を行います。わが党は、上程された議案 71件のうち、議案第77号、議案第79号、議案第81号、議案第85号、議案第86号、議案第88号、議案第90号、議案第92号、議案第100号、議案第104号、議案第114号、議案第118号、議案125号及び、議案第127号の議案14件について、反対であります。その主な理由について述べます。
去る3月13日来年度政府予算が衆議院を通過しました。安倍内閣による新年度予算は、第1に、医療、介護、年金など社会保障切り捨てを一層進めるものであり、第2に、大企業に対して、1兆6千億円もの減税を進めるなど大企業優遇するものであり、第3に、5兆円を超える軍事費を増やすなど軍拡をおしすすめるものとなっています。わが党は、こうした予算に正面から対決し、抜本的組み替えを提起したたかってきました。
今、地方は、住民のくらしの困難、福祉・医療の危機、地域経済の衰退など深刻な事態に直面しています。消費税増税と円安による物価の上昇、年金や生活保護費などの連続引き下げと医療、介護の負担の中で、暮らしへの悲鳴が広がっています。 ある高齢者がテレビに登場した安倍首相が「アベノミクスの恩恵が地方と国民にひろがりつつある」と述べたことに腹を立て、テレビに向かって、「わしの年金増やせ」と叫んだそうです。
地方経済も深刻な事態を迎えています。本市の事業所をみても、ここ10年余りで、製造業は、2548事業所から2055事業所へと2割にあたる500余りが減少しています。小売業は、5680店から4544店へと1100店余り。2割の減少となるなど衰退が続いています。伝統産業や農林水産業は、引き続き、深刻な事態が続き、事業の継承が危ぶまれる状況となっています。
こうした状況だからこそ、自治体が安倍暴走政治の社会保障の大幅削減、くらし破壊の政治をそのまま持ち込ませず、自治体本来の役割である、住民のくらしを守り、福祉向上のために全力で取り組まなければなりません。
その点からみると、本市新年度予算は、重大な問題があり、その転換が求められるものです。
第1に、公共事業の拡大が突出し、引き続き大型開発事業が進められていることです。本市の一般会計規模は、1615億円から1666億円へと51億円の増加となりました。消費税増税による交付金が増加する一方地方交付税が26億円の減少となっています。一方、支出は、公共事業が176億円から214億円と38億円もの増加となっています。大型開発事業が引き続き行われています。金沢港建設事業は、平成24年11月の事業評価では、253億円だった事業費が平成26年12月の事業評価で304億円と51億円が増加されました。岸壁の延伸と浚渫土砂の増加を理由としています。その結果本市の負担が43億円から51億円と増加したものです。この事業は、大手企業こまつが、金沢港に隣接した用地に工場を建設し、大型機械製品の搬出のために大深水岸壁を10㍍の深さを13㍍に掘り下げる共に、周辺道路の整備をするとした事業です。わが党は、大手企業へ利便を図るものとして批判してきました。
金沢外環状道路建設事業は、当初8車線の高規格道路として整備し、本市の3つの区画整理事業とセットしてさらに事業が拡大された道路建設が進められてきたものです。片町A地区市街地開発事業は、大手ゼネコン主導の再開発事業として進められ、県外資本が参入する再開発ビルとして事業が進められています。
金沢駅武蔵北地区再開発事業は、36年を経て一昨年事業が終結したもので、総事業費533億円にのぼりました。しかし、未だ入居者が埋まらず、昨年12月議会では、入居に伴う改修費など1100万円が計上され、今回の新年度予算でも、新たに入居に伴って、改修費などに1200万円が一般会計から計上されるなど際限のない税金投入となっており、認めることはできません。
第2に、大手企業など「呼び込み型」の企業誘致による地域振興策の失敗と市民負担が押しつけられていることです。
森本にある金沢テクノパークは、先端産業を誘致するとして280億円を投じ、計画された工業団地です。最初の企業立地から20年が経過しますが、4分の1にあたる6区画8.5haが売れ残り、その面積は、東京ドーム約2個分に相当します。この7年間立地はゼロです。しかも、企業立地する企業に対してのべ10社に総額25億3600万円余りの助成金が支払われています。さらに、このテクノパークに対する工業用水事業は、特別会計を設け運営されています。水道料金収入ではまかなうことができず、一般会計で赤字補填しています。新年度予算でも、資本的収入への補助金と合わせ、一般会計から3011万円が投入されています。今回本市土地開発公社の解散にともなって、このテクノパーク用地の売れ残った土地について、その簿価である約30億円について、起債を持って買い戻す対応がされました。結局、失敗した事業のツケを市民に押しつけようとするもので到底市民の理解を得られるものではありません。そして、テクノパークの真下に、新たに企業立地を進めるためとして金沢インター工業団地が造成され、企業の誘致がはじまっています。34億円の事業費が投じられてきました。
一方、伝統産業振興費は、1億2600万円、工業指導育成費は、2億2千万円余り、商業振興費は、3億7千万円となっています。
大手企業など「呼び込み型」の企業誘致に巨額の財政投資を続けるのではなく、地域に根を張っている中小企業、店舗への応援に切り替え、地域経済の振興を計るべきです。
第3に、高齢者に喜ばれてきた制度をばっさり削り、医療、介護、福祉の自己負担を増やしていることです。
まず、長寿お祝い金の削減です。
現在、本市は88歳、99歳、100歳そして、101歳以上の方に対して、一人あたり3万円を贈呈し、100歳の方については、花束と記念品を贈呈しています。今回、新年度予算では、対象を88歳と100歳の方に限定し、88歳の方には、寝具用品の贈呈、100歳の方には、5万円のお祝い金を贈呈するとしています。これによって、対象者2170人だったものが、1907人へと263人を減らし、6500万円の事業費が3800万円へ、2700万円を削減するとしています。
ふれあい入浴の利用者負担を100円から150円に引き上げ、すこやか検診や大腸がん検診などの自己負担をそれぞれ100円増やすとしています。さらに、子宮頸がん、乳がん、大腸がん検診の無料クーポン券が国の方針で新年度に廃止される事になります。受診率を引き上げ、市民の命と健康を守ることが最大の課題であるにもかかわらず自己負担を引き上げ、無料クーポン券まで廃止するのは逆に受診率を引き下げる事になります。
在宅ねたきり高齢者への歳末見舞金と高齢者施設入居者への夏季見舞金を廃止するとしています。新年度予算では、720万円の削減になります。3000円の見舞金を楽しみにしていたことまでバッサリ削減です。
市長は、こうした対応について、持続可能な制度を維持するためだと述べていますが、安倍内閣の社会保障削減を進める理由と同じくするもので、実際は、制度をバッサリ廃止したり、削減する内容となっています。まさに、財源がないのではなく、福祉の心が無いと言わざるをえません。
なお、予算と議案との関連で明らかにしておきたい点についてです。
介護保険料の引き上げです。
65歳以上の第1号被保険者の介護保険料の基準月額5,680円を6,280円に引き上げるもので、介護保険制度が始まった2000年に3,150円だった保険料が3年ごとに見直され、とうとう2倍に引きあがることになります。年金の3年連続引き下げが実施され、消費税の増税と物価の上昇が、高齢者の生活を直撃し、その生活実態が悪化の一途をたどっているだけに、高齢者の負担も限界となってきています。国の責任ある財政負担を求めるとともに、本市独自に財政措置を講じ保険料の引き上げをやめるべきと考えるものです。なお、介護報酬引き下げによる介護施設への影響や、要支援1と2の方の通所介護、訪問介護について、介護保険制度から外し、地方自治体が行う介護予防・日常生活支援総合事業の実施への移行を2年間猶予した点について、現場の状況を十分把握し今後の対応を行うよう求めておきたいと思います。
水道料金についてです。
県が、新年度から県水の責任水量を現在の7割を6割に引き下げた結果、本市では、県水受水費が軽減され、その額は、4億6千万円にのぼります。本市の水道料金が高くなっているのは県水受水にあります。
本市は、自己水の単価に比べ3.8倍も高い県水を膨大に受け入れ、責任水量制によって、その7割を支払わなれければなりませんでした。その額は、年間32億4900万円にのぼります。一方、安くておいしい自己水で十分まかなえるにも関わらず、配水能力の3割程度しか使っていません。わが党は繰り返し、こうした問題点を明らかにし、県に対しても直接改善を求めてきました。
今回、県が県水の責任水量を引き下げたことによって生み出された財源は、水道料金の引き下げを実施し、市民に還元するよう改めて強く求めておくものです。また、市内4ヶ所の簡易ガス事業について、その料金引き上げには反対です。
国民健康保険料についてです。
国民健康保険料の算定方式を住民税方式から旧ただし書き方式に一昨年、変更したため、6万4千世帯の加入者の内、約4割にあたる2万4千世帯の保険料が引きあがりました。そのため、激変緩和措置が取られましたが、一般世帯では、今年度で終了し、障害のある方の世帯などでは新年度で終了します。住民税方式に比べ2倍にもなるなど保険料の負担が大きく、その結果、支払えない世帯が加入者の2割にのぼっていることからも、保険料の引き下げと軽減対策の拡充を求めておきます。
後期高齢者医療制度は、高齢者を区別し、死亡するまで負担を押しつけるもので、この制度を改めるよう求めるものです。また、生活保護基準の引き下げが25年度、26年度に引き続き、実施することには反対です。
社会保障・税番号制度。いわゆるマイナンバー制度の具体化に関するものです。税金や保険料、社会保障給付の記録などを一元的に管理するとして、今年10月から、お知らせが市民に届けられ、来年4月から番号、氏名、住所、生年月日、性別が記載されたカードが配布されこととなり、その費用として本市では3億円が予算化されるものです。
ところで、安倍内閣は、去る3月10日閣議決定し、この法改正を打ち出しました。その内容は、このマイナンバーを預金口座に適用するというもので、個人の資産を把握し、税金や社会保険料の徴収に役立てるというものです。
国や自治体が税や社会保障に関する個人情報を管理することには各方面から批判の声が広がっています。また、ブライバシー権を守る上からもその実施には賛成できません。
総合教育会議の設置など、いわゆる教育委員会改革法に基づく予算と議案についてです。
この法律改正によって、①教育長と教育委員長を一本化して新しい教育長となる。②首長が主宰し、教育委員が参加する総合教育会議が設置され、教育に関する大綱を首長が策定する。③新教育長は、首長が直接任命・罷免する。というものです。
これは、教育行政の方針は、現在、首長から独立した合議体である教育委員会が決めていたことからすると首長や政治権力による際限のない支配や介入に道を開く危険な内容であり、憲法が保障する教育の自由と自主性を侵害するものとして各方面から批判の声が上がったものであります。
なお、参議院文教科学委員会で、下村大臣は、わが党の田村議員の質問に対して、都道府県知事が策定する大綱に、教科書採択や学力テスト結果公表など市町村教育委員会を拘束する事項を記載することについて「適当でない。仮に策定されたとしても市町村が従う義務はない」と答弁していることを指摘しておきたいと思います。
泉小学校・泉中学校建設事業費についてです。
これまで指摘してきたように古くなった小中学校を新しくしてほしいとの要望を逆手にとって、二つの小学校を統廃合し、小中一体校の建設へと進めてきたものです。統廃合した泉小学校と泉中学校と併せると1000人近くの児童生徒数を抱えることになります。幼児期を過ぎた小学生と思春期を迎えようとする中学生を小中一体校と称して学ばせることには各方面から疑問の声が出されています。十分な理解と合意がないままのこうした統廃合と小中一体校の建設には、賛成できません。合わせ、中学1年生に対する学力テストはやめるよう求めておきます。
職員定数の削減です。
この5年間で職員定数が50人削減され、その結果、校務士の削減による教育現場への影響は深刻となっています。一方非常勤、臨時職員が合わせて1000人を超えています。職員の労働環境を改善する上からも、職員定数の削減はやめるよう求めるものです。
家庭ゴミ有料化の導入検討についてです。
わが党は代表質問、連合審査会で取り上げたように、家庭ゴミ有料化の導入は、市民に新たな負担を押しつけるものであり、ごみ減量化は、こうした負担を導入するのではなく、市民の理解と協力を粘り強く続けてこそ実現することを明らかにしてきました。行政自らがごみ減量化に向けた施策を進める努力をおこない、市民からの共感と協力を広げる努力こそが回り道であっても、必要であり、安易な有料化を市民に押しつけることはすべきではありません。
本市が過去いったん有料化したが、市民の理解が得られず、廃止しました。こうした経験こそしっかり学び、今回の有料化を行わないよう強く求めるものです
次に、請願・陳情についてです。
請願第46号は、医療・介護総合推進法および介護報酬の改定の撤回・廃止を求めるもので、特別養護老人ホーム入居待機者家族会の代表から提出されました。
深刻な介護を取り巻く現場から切実な声を取り上げたものでわが党は、賛成であります。
請願第47号は、農協改革など、「農業改革」に関するもので、請願第48号は、米価対策の意見書を求めるもので、請願第50号は、TPP交渉に関するもので、いずれも、農民運動石川県連合会の代表から提出されたものです。家族的農業経営を育て、食料自給率を向上させる政策、農協自身の改革を尊重すること。また、米価の回復など対策を国に求めること。そして、TPP交渉に関する国会決議を順守し、守れない場合は、交渉から撤退することを求めるもので、わが党は、賛成です。
請願第49号は、マクロ経済スライドの実施の中止を求めるもので、全日本年金者組合金沢支部の代表から提出されたものです。
年金の3年連続の引き下げを強行し、マクロ経済スライドの実施は、年金を恒常的に引き下げる装置とも言えるもので、その中止を求めることに、わが党は、賛成です。
陳情第87号は、子ども医療費の窓口無料化を求めるもので、市民本位の金沢市政をつくる会代表委員等から提出されたものです。
県がようやく、県民世論の広がりの中で、県内自治体からの要望、県議会での請願採択などから償還払いから現物給付についても補助対象として認めることを明らかにしました。こうしたことを受け、本市でも子ども医療費の窓口無料化を求めるもので、わが党は、賛成です。
以上の請願、陳情は、いずれも、付託された各常任委員会で不採択されました。わが党は、この不採択に対して反対をするものです。
陳情第86号は、政務活動費に関するもので、市民オンブズマン石川の代表幹事から提出されたものです。
政務活動費に関して、去る1月15日最高裁判所が決定を下し、本市議員21名に対して1005万2600円の返還を命ずる判決が確定しました。これをうけ、透明性を確保し、改善を求める陳情が提出されたもので、わが党は賛成であります。
陳情第88号は、金沢市における自転車スポーツ振興と競輪事業の拡充に関するもので、金沢市自転車スポーツ振興会の会長から提出されたものです。
ギャンブル施設である競輪場外車券売り場設置をめぐっては、大徳地区での計画や鞍月地区での計画など地域住民から反対の声が高まり、設置が断念されてきました。大徳地区での設置をめぐって、本市議会に百条委員会が設置され、今議会に報告書が提出されることとなりました。こうしたさなかに、今回のギャンブル施設設置推進を掲げる陳情書には、わが党は、反対であります。
いずれの陳情も継続審査することが決められましたが、このまま本市議会の任期が終了することになれば採決されないまま終了となってしまいます。
わが党は、こうしたことから、継続審査には、反対を表明するものです。
以上で討論を終わります。