国公立大学の入学式及び卒業式における国旗の掲揚及び国家の斉唱を求める意見書
意見書の反対討論 金沢市議会・2018年6月
2018年6月25日 日本共産党金沢市議会議員 森尾嘉昭
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私は、日本共産党市議員団を代表して、提出された議会議案第5号国公立大学の入学式及び卒業式における国旗の掲揚及び国家の斉唱を求める意見書に対して、反対討論を行います。
先週の6月23日、沖縄は慰霊の日でした。20万人を超える方の命を奪った沖縄戦から73年目に当たりました。中学3年生の「命輝かせ生きる」と題して読んだ詩は胸を打つものでした。平和の尊さと命の大切さを述べ、生きる事への共感を伝えるものでした。
あの戦争へ国民を駆り立てていくために、使われたのが、日の丸であり、君が代でした。
ですから、国旗、国歌が法制化される際、主権在民という憲法が明記した点からふさわしいものなのか。あの忌まわしい戦争の象徴となった日の丸に対して持つ国民の感情にも配慮することが必要だとする意見が表明されました。したがって、国旗、国歌は、国として公的な行事に使うということが認められ、国民や教育にも強制されるべきでないという点が国会でも議論されてきました。
ところが、国は、学習指導要領に明記したことを理由に学校や公的関係機関に国旗掲揚と国歌斉唱を実施するよう強く押し付けてきました。
しかし、大学関係者は、大学の自主的判断との対応を行ってきました。
こうした中、2015年6月16日当時の下村文科大臣が、全国86の国立大学の学長に
対し、口頭で卒業式・入学式での国旗の掲揚及び国歌の斉唱を要請しました。
これに対して、全国の憲法研究者100名がこの発言について撤回を求める声明を発表するな
ど議論が広がる中で、大学の自主的判断との見解がとられてきました。
今回のこの意見書は、こうした状況を理解した上での対応なのか。無視しての対応なのか
わかりません。しかし、質疑のやり取りでは、憲法に違反し、教育基本法が禁じた政治によ
る介入にあたるとの認識は得られなかったようです。重大な指摘すら聞き耳持たずというの
は到底民主主義の議論とは言い難いものです。
改めて指摘するものですが、
第一に、この意見書は、憲法23条が学問の自由を保障すると明記し、大学設置基準にも、
教育内容は、大学が自主的に定めるものとされている点に照らして、国公立大学の運営には
税金が投入されているから国旗の掲揚及び国歌の斉唱を求めるというのは、憲法違反の内容
となっています。
第二に、国に対して国公立大学の入学式及び卒業式における国旗の掲揚及び国歌の斉唱がな
されるような仕組みづくりを行うよう求めることは、教育基本法が禁じている政治による教
育への介入に他なりません。
なお、わが党がこうした憲法上問題のある意見書であるからと指摘し、会派に申し入れた
点について、こともあろうに会派に与えられた意見書提出権への侵害だとか。議会での議
論ルールにそむくものだとかいうのは、的外れです。自ら提出した意見書の重大性こそ、理解すべきだと考えます。
本市が、教育機関が多く集中していることから、学都と言われてきました。そうした本市
の議会が、全国の国公立大学に関わる内容で、憲法違反とも受け取られかねない意見書を
提出することは、あってはなりません。見識ある対応を求めるものです。
以上を持って反対討論を終わります。