-山下議員
質問の機会を得ましたので、日本共産党市議員団の一員として質問をいたします。
最初の質問は、誰もが安心できる介護保険制度の構築についてです。国は、市民や介護関係者の抗議の声を聞かずに、訪問介護に対する基本報酬引き下げを強行しました。日本医療労働組合連合会が5月から9月に行った訪問介護の基本報酬引き下げに関するアンケート調査では、既に経営が悪化している事業者が7割に上り、今後考えられる影響には、経営の悪化、一時金の減額、新規職員採用が困難など、既に報酬引き下げの影響があるという回答が見られています。3月議会で市長は「今回の報酬改定は、処遇改善や生産性向上による職場環境の改善を推進するもの」と答弁をされましたが、現場の実態は既に深刻です。報酬改定によって事業者がどのような影響を受けているのか、本市では調査を実施しているのかをお聞かせください。
-山口福祉健康局長
国におきまして、次期の介護報酬改定のための検討資料といたしまして、今年9月に地域の実情等を踏まえたサービス提供のあり方に関する調査を行っております。従いまして、本市独自の調査を行うことは考えておりません。
-山下議員
東京商工リサーチの2024年度上半期老人福祉介護事業の倒産調査によると、24年度4月から9月の倒産が95件で過去最多となっています。そのうち訪問介護が46件と半数を占め、その多くが地域型の小規模事業者になっています。ヘルパー不足や高齢化、燃料代などの運営コストの上昇に加えて、介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性があると分析をされています。マイナス改定のままでは事業所が存続できず、高齢者の命と生活は守れません。改めて国に対して、緊急的にも訪問介護報酬引き下げ撤回をと求めていただきたい。市長、いかがですか。
-村山市長
今ほど福祉健康局長が一部申し上げましたけれども、国において介護報酬改定の検討を始めております。また、介護職員の賃上げに対する補助金の補正予算も計上されておりますので、本市としては、訪問介護の基本報酬引き下げ撤回を求めることは考えておりません。
-山下議員
地域のホームヘルパー業を55年も担ってきた秋田市社会福祉協議会が運営するヘルパー事業所が、今年度末で閉鎖をするという新聞記事もありました。県社協の担当者は、経営悪化要因に「今年度からの介護報酬の基本料引き下げが最も大きい」というふうに語っています。老舗のそうした市社協でさえ閉鎖に追い込まれるような報酬の改悪ですので、引き続き撤回を求めていきたいと思います。
次に、基準緩和型訪問サービスについてお尋ねをします。2014年の介護保険法改悪で、介護予防・日常生活支援総合事業が盛り込まれました。介護費用の抑制を狙い、介護度の軽い方を保険給付から外し、その受け皿を市町の事業に任せるというもので、本市においては2017年度から開始されています。本市の基準緩和型訪問サービスにおいては、予算が年々縮小し、長寿安心プランで見込んでいる利用数にもなっていません。その要因についてお尋ねをします。
-山口福祉健康局長
令和2年度から基準緩和型訪問サービスの利用者数が減少していますことは承知しております。その理由といたしましては、新型コロナウイルス感染症の影響によるサービスの利用控えなどが要因と考えております。
-山下議員
基準緩和型訪問サービスは、資格を持たないケアサポーターが従事をでき、介護予防型に比べ利用料が安く、利用者には利用しやすいですけれども、その反面、事業者には報酬が低いものとなっています。現場からは、基準緩和型を依頼しても断られる、利用者の生活を支えるため受けているけれども、有資格の職員が行くので経営的に厳しいという声があります。介護予防型を提供する事業者は、事業者全体の8割に対して、基準緩和型は全体の4割にとどまっているところを見ても、基準緩和型訪問サービスが現場の実態に合っていないのではないでしょうか。基準緩和型が、利用者はもちろん、介護職員や事業者にとっても有益な制度なのか見直しが必要です。市として実態調査を行い、実態に合った誰もが安心できる制度の構築を求めますが、見解を伺います。
-山口福祉健康局長
明年度に、次期長寿安心プランの策定のための基礎資料といたしまして、介護労働実態調査及び在宅介護実態調査を実施する予定でございます。その中で、この基準緩和型サービスの利用状況等の調査を考えております。
-山下議員
名古屋市では、実態調査をして、今年度から総合事業の生活支援型訪問サービスの報酬を9.4%引き上げをしています。本市でもぜひ、利用者に跳ね返らない報酬の引き上げを含めた改正を求めます。
この質問の最後は、緊急の対策が必要な介護職員の確保についてです。介護職は、全産業平均と比べ月7万円も低く、人手不足の大きな要因になっています。特にホームヘルパーは賃金が低く雇用も不安定なため、有効求人倍率が15倍になるほど不足しています。低賃金では人が来ないことは明白です。しかし、今の介護報酬では職員確保や定着のための十分な賃金が払えないなど、一事業所だけでは職員確保に厳しい現状があります。そこで、市独自で介護職員への援助金等の処遇改善を行い、積極的な職員の確保や定着促進策を図ることを強く求めますがいかがですか。
-村山市長
介護事業所等へ就労する方、介護職員の確保についてでありますけれども、UJIターンの支援、就職情報交換会などの人材確保策に加えまして、資格取得支援、ハラスメント防止研修などの人材定着を支援する事業につきまして、本市独自で実施をしてきたところであります。今後も国や県と連携しながら、効果的な人材確保とその定着策に取り組んでまいりたいと存じます。
-山下議員
ぜひ積極的にお願いいたします。そして、処遇改善策がやはり保険料や利用料の負担増にならないように、私たちは国に対して介護保険の国庫負担を増やすことを求めていますが、市独自の施策も引き続き求めていきたいというふうに思います。
質問の2つ目は、有機フッ素化合物PFASの調査についてです。発がん性など、さまざまな健康への影響が指摘される有機フッ素化合物PFASをめぐって、その深刻な実態が全国各地で明らかになっています。これまで、米軍基地や自衛隊基地、関係工場、産業廃棄物処理場の周辺の河川や湧き水、土壌、飲用水から高濃度の汚染が確認され、国も全国調査に乗り出しました。今年5月から9月にかけて初めて全国の水道事業者に調査を要請し、11月29日、その結果を公表しています。そこで、本市の水道水における有機フッ素化合物の調査状況とその結果を伺います。また、市民の皆様にはどのように報告したのかもお聞かせください。
-松田公営企業管理者
令和2年4月にPFASが国の水質管理目標設定項目に追加されて以降、年2回検査を行っております。これまで、暫定目標値であります50ng/Lをはるかに下回る定量下限値未満となっております。結果につきましては、企業局のホームページで公表しております。どうか安心してご利用ください。
-山下議員
これから基準値、目標値も見直されるということですので、今後も徹底した調査と分析をお願いいたします。金沢市では、2023年に有機フッ素化合物PFOS及びPFOAの測定を主要な6河川で開始していますが、河川において測定に至った経緯を伺います。
-越山環境局長
河川水の定期的な水質測定は、水質汚濁防止法の規定により、石川県水質測定計画に基づき実施することとなっておりますが、PFOS、PFOAにつきましては、全国的に検出される地点が多く見られたことから、河川水の監視を強化するため、昨年度より本市独自で主要な6河川の水質測定を開始した次第でございます。
-山下議員
今年度実施した6河川の水質調査において、伏見川橋付近の伏見川で国の暫定指針値を超える有機フッ素化合物が検出されました。また、国が実施した水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査において、市内にある専用水道55施設と簡易水道5施設に検査を依頼したところ、検査を実施した専用水道19施設のうち3施設で暫定目標値を超過したことが確認されています。伏見川と専用水道3施設で暫定目標値等を超過した原因は解明されているのでしょうか。
-越山環境局長
原因や汚染範囲を把握するためには、伏見川橋の上流や伏見川に流入する支流とともに、暫定目標値を超過した専用水道周辺の井戸水について追加調査を行う必要があることから、今般、その調査費用に係る予算をお諮りしている次第でございます。
-山下議員
河川の水質調査については、どの河川が暫定指針値を超えたかということは公表されています。しかし専用水道についてはどの施設か公表していないということですが、その理由をお聞かせください。
-山口福祉健康局長
今回の水質調査ですけれども、国からの通知に基づくものであります。各専用水道の管理者からの回答を取りまとめたものになります。現時点で、PFASにつきましては規制となる水道水質基準ではなく、かつ今回の調査は自主的に御協力いただいたものでございますので、公表することは考えておりません。なお、超過した施設につきましては、浄水装置の取り付けなどの改善措置によりまして基準値内に低減しているところでございます。
-山下議員
では、暫定目標値等を超過した河川の周辺の住民や3施設の利用者等への水質調査の結果の周知は個別に行ったのか、お聞かせください。
-村山市長
本市が実施いたしました河川の水質測定結果につきましては、暫定指針値を超過した伏見川橋の測定結果も含め、測定したすべての地点におきまして本市のホームページで広く公表しております。また、専用水道施設につきましては、施設側が自主的に検査を行ったものであります。利用者等に通知するかどうか決定するのは、管理者の判断であると考えております。
-山下議員
暫定目標値を超えた施設にはやはり飲用水を避けるよう指導を行ったということも聞いています。健康被害への影響が明確でないにしても、やはり飲まないというように指導するような水質状況であるならば、やはり周辺住民や利用者等に知らせないというのは問題だというふうに考えますので、ぜひ、今後周知するような検討をしていただきたいと思います。
市内の専用水道55施設のうち、検査を実施した施設は19施設と、全体の35%にとどまっています。簡易水道5施設については検査をしていません。全国的には検査を実施しない理由に、PFASについて測定する義務がないと挙げられているようですが、市民の健康を守るためにも全市的な調査が必要です。検査をしていない施設に対して追加検査等を依頼すべきと考えますが、市の対応を伺います。
-山口福祉健康局長
PFASの検査を実施していない専用水道の36施設及び簡易水道の5施設の事業者に対しましては、11月中に国や本市におけるPFASに関する情報の提供を行いますとともに、検査の実施について検討を依頼したところでございます。
-山下議員
検査を実施しない理由に「検査費用が負担だ」というものもあります。水質検査について公費負担が必要ではないですか。
-山口福祉健康局長
現在PFASにつきましては、水道法に基づく水質基準項目となっておらず、検査義務もないことに加えまして、ほかの水質検査項目との整合性も考慮いたしまして、公費負担を行うことは難しいと考えております。
-山下議員
国も全国的な調査に乗り出しているという状況ですので、ぜひ公費負担も検討していただきたいというふうに思います。
PFASの汚染については、その汚染の実態とともに、発生源の調査が必要です。日本共産党の山下よしき参院議員が今年3月の環境委員会で、PFASを製造、販売、使用している事業者が、少なくとも全国で43都道府県200自治体に所在することを明らかにしています。市は、PFASを製造、販売、使用している事業者が市内に所在しているか把握しているでしょうか。今後調査が必要だと考えますが、いかがですか。
-越山環境局長
PFASは1万種類以上の物質があると言われております。そのうち、現在、暫定目標値や暫定指針値が示されているPFOS及びPFOAにつきましては、いずれも既に製造、輸入、使用等が原則禁止されております。その2つの物質以外については、国内においてその毒性などが評価されておらず、現在、国でPFASの環境中の存在状況に関する調査を行うなどの検討をしているところでございます。まずはその動向を注視していきたいと考えており、PFASを製造、販売、使用している事業所を調査することは考えておりません。
-山下議員
やっぱり汚染の実態とともに発生源を突きとめるということは必要ですので、ぜひ国の動向も見ながら、調査が必要であれば進めていってほしいと思います。
国は、全国調査の結果を受けて、目標値の変更を検討するとしています。欧州連合EUでは、昨年2月に、1万種類以上ある全てのPFASの製造や使用を禁止する規制案を出しました。一方、日本で禁止されているのはPFOS、PFOAなど3種類のみです。また健康への影響の懸念から、基準値を1リットル4ナノグラムに強化したアメリカと比べても、現在国が設定している1リットル当たり50ナノグラムという暫定目標値は大変緩い基準です。健康被害と環境汚染を防ぐためにも、規制するPFASの種類も含めて基準を厳しくするよう国に求めるべきと考えますが、見解を伺います。
-村山市長
現在、国の方で、PFASの暫定目標値の見直し、そして水道法上の水質基準項目に格上げすることを検討していると伺っております。そのことから、その動向を注視してまいりたいと存じます。
-山下議員
市民の生活と健康に大きく影響することですので、今後の調査とその結果について、また市民の皆さんに十分な説明と周知をお願いをいたします。
次に、教育のデジタル化についてお尋ねをします。ギガスクール構想のもと、全小中学校に一人一台端末が導入されて4年になります。次年度、金沢市でデジタル科が新設をされますが、教育のデジタル化が教育本来の目的に沿って行われているかを問い直す必要があるのではないでしょうか。教育はこどもの人格の完成、こどもの尊厳を守りながら成長と発達を支える営みです。しかしGIGAスクール構想には「安心と成長の未来を開く経済対策」と銘打つ経済産業省の「未来の教室」や、学術的根拠のないソサイエティ5.0の実現という国家戦略が背景にあり、公教育に民間企業を参入させ教育を市場化し、デジタル社会に対応する人材を育成するという財界の狙いがあります。そこで、金沢市における教育のデジタル化は教育の本来の目的に沿って行われているのか、お伺いをします。
-野口教育長
はい。お答えいたします。情報活用能力の育成というものが現行の学習指導要領に示されたことに加え、個別最適な学びと協働的な学びを実現するためには、教育のデジタル化が必要であると考え、取り組むことといたしました。ICT機器の活用というものはあくまでも手段であることに留意した上で、明年度から始まる新金沢型学校教育モデルにおきまして、こどもたちが社会の変化を前向きに受け止め、豊かな創造性を蓄え、持続可能な社会の作り手として予測困難な未来社会に自律的に生きていくために、デジタルを活用して新しい価値や最適解を生み出すことができる人材の育成を目指していきたいと思っております。
-山下議員
本格的にデジタル教科書も配布され、今後は全国学力調査をオンライン方式で実施するなど、ICT化が更に進んでいきます。一方で、日本よりも先にICT教育を進めてきたスウェーデンやフィンランドでは、こどもらの学力低下や身体への影響、教員の指導力低下が問題視され、紙と鉛筆を使う伝統的な教育方法に戻す脱デジタル化の動きになっています。ICTの活用が効果的な面もあり、全てが否定するものではありません。しかし、ICT教育がこどもたちの成長や発達にどう影響し、学びにもたらす効果と影響については真剣に検証する必要があります。そうした検証を行って、新設する「デジタル科」も含めてICT化を見直せるような体制があるのか、伺います。
-野口教育長
今大切なことを述べられたと思っています。私は理科を研究教科にしてきた人間でありますので、やはり物事を進めるためには評価とか検証はとても大事なことだと思っております。明年度は、全小中学校の学校評価の重点項目にデジタル化に関する項目を設定し、児童生徒や教職員を対象にするアンケートや各種教育活動データなど、複数の指標を基にして検証していきたいと考えております。また加えまして、新金沢型学校教育モデルにおきましては、日々の学習を通して自分は何ができるようになったのかを振り返る金沢リフレクションを位置づけており、児童生徒1人1人がデジタル力を身につけることができたかどうかについて振り返り、相互評価を行いながら、その結果につきましては、児童生徒が学びの成長を自覚できるように活用していきたいと思っております。
-山下議員
ぜひ十分な検証を行っていっていただきたいと思います。
今回補正予算の教材整備費は、プログラミング学習用教材の調達とメタバース体験に必要な独自コンテンツの作成というふうにあります。メタバースは急成長の産業というふうに言われていますが、仮想空間の体験や既成の教材を使うことがこどもたちの主体的で継続的な学びにつながるのか、また教員とこどもたちの生きた学びにつながるのか、大変疑問に感じます。ユネスコの2023年グローバル教育モニタリングレポートでは「教育テクノロジーに関する良質かつ公正なエビデンスはない」「エビデンスの多くは製品を売り込もうとする側から提供されている」と指摘をされています。義務教育におけるプログラミングや最先端技術を体験することでどんな効果を期待しているのか、その教育的意義は何か、お伺いをします。
-野口教育長
今、目の前に生きて勉強しているこどもたちが、これから20年、30年生きていった時に、おそらくメタバースのような仮想空間の中における活動というのは、さらに広がりを見せていくのではないのかなと思っております。文部科学省の小学校プログラミング教育の手引きにおきましては、プログラミング教育は、こどもたちの可能性を広げ、想像力を発揮し、将来の社会で活躍できるきっかけとなることが期待できると示されています。明年度から始まるデジタル科におきましては、まずは小学校では生活や地域の課題を解決するために、またドローンなどのロボットを有効に活用するためにプログラミングを作成いたします。中学校では、金沢の街並みを再現したメタバース空間による地域の活性化策を考案することなどを学んでいくこととしております。先端技術を通して、児童生徒が主体的にデジタル社会と関わるデジタル力を育成していきたいと考えております。
-山下議員
補正予算の教材整備費は9900万円、そして2024年度のICT支援専門員の派遣は大手民間企業に1億1500万円で委託をしています。これを見ても、既に財界の狙いどおりというふうに私は感じます。教育のデジタル化については、教員の負担軽減やこどもの個人情報、データ活用など課題は多くありますので、また今後も引き続き議論をしていきたいと思います。
最後の質問は、不登校支援の現状についてです。文科省が2023年における児童生徒の問題行動や不登校などの実態調査の結果を公開しました。不登校児童生徒数は全国で34万6482人と過去最多となり、11年連続増加をしています。特に小学校は10年前の10倍となっている現状です。不登校の定義に当てはまらない、何とか登校しているという子も含めて、学校が安心できる場ではないというふうに感じている児童生徒が増えていることは、学校のあり方そのものが問われているのではないでしょうか。金沢市の不登校児童生徒数は、小学校では498人、中学校は823人で、全国同様、前年より増加をしています。何が根本的な要因だと捉えているか、伺います。
-野口教育長
国の調査結果によりますと、学校が不登校児童生徒について把握した事実からは、生活のリズムの不調や学校生活に対してやる気が出ないなどの相談が多く挙げられておりまして、本市におきましても国と同様の傾向が見られるというふうに考えております。
-山下議員
今回の全国調査では、不登校のきっかけが児童生徒と学校側との認識に大きな開きがあったことから、回答する方法を見直して調査が行われました。市内では、9月に発行された金沢市医師会の「すこやか」という冊子に「不登校の背景にあるもの~こどもたちからのメッセージ~」の中でその認識の差が紹介をされていて、大変大きな反響がありました。2021年の文科省が示す不登校の原因の約50%が「本人の無気力・不安」、いじめは0.2%、教職員との関係をめぐる問題が1.2%となっている一方で、専門外来を受診したこどもたちの声をまとめたものでは、対人関係による社交不安が19%、いじめが19%、先生との関係が12%となっています。「この認識の差こそが不登校の最大の原因になっている可能性を考える必要がある」とも指摘をされています。学びの多様化学校設置検討委員会で、教育委員会は「不登校要因の主たるものでは本人に係る状況が主な要因」だと状況報告をしていましたが、今回の実態調査も踏まえ、児童生徒と学校側とで認識に差があったと捉えているのか、お聞きをします。
-野口教育長
令和4年度までの調査では、不登校の要因を1つ選択するものでありましたけれども、令和5年度の今回の調査におきましては、学校が判断した要因ではなく、学校が把握した事実を複数回答することに変更されました。そのことによって、児童生徒の実態がより反映されているものになっていると考えています。本市ではこれまでも、担任や教職員による面談、家庭訪問、学校独自のアンケートの実施など、児童生徒の声が学校に届く体制づくりを整えておりまして、不登校の要因につきましては、学校と児童生徒の認識はそれほど差はないというふうに考えております。
-山下議員
当事者からすると、本当にこの報告というのが大変認識に差があるというふうに感じます。認識に差があれば、適切な対応や支援につながっていかない可能性が生じます。先ほども、生活のリズムの乱れだとか、やる気が出ないということもありましたけれども、こどもたちを無気力や不安にさせているものは一体何なのか、そこをぜひ見ていただきたいというふうに思います。
次に学びの多様化学校についてお尋ねをします。今年度設置された学びの多様化学校設置検討委員会での審議を経て、「設置が望ましい」という答申が出ました。支援の選択肢が増えることは望ましいというふうに考えます。どのような学校の設置をどこでどのように決めていくのか、お聞かせください。
-野口教育長
学びの多様化学校設置検討委員会からは、現在の不登校児童生徒数の状況から、学びの多様化学校を設置することが望ましいとの答申を受けたところでございます。合わせて、設置するにあたりましては、講習等の検討、教育課程等の工夫、関係機関との連携、立地環境の検討、施設や設備の充実、人材の確保、不登校児童生徒やその保護者等の実態把握等に留意して、さらに議論を深めることが必要であるとの答申内容でありました。今後、教育委員会におきまして、示された検討課題に対するさらなる議論や、設置に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
-山下議員
市長提案説明では、旧馬場小学校跡地が候補地になり得るということでした。これから検討が始まるという段階で、金沢経済同友会との懇談で報告をし、その後に議会へ提案というのは、余りにも議会軽視ではないでしょうか。こどもたちが歩いて通える既存の施設は学校跡地以外にも存在しますし、自然豊かな学校跡地はほかにもあります。地元への説明や合意があったのか。何よりも、不登校児童生徒や保護者から声を聞くこともせず、当事者をないがしろにした提案に大変憤りを感じます。確認しますが、旧馬場小学校跡地が既に第一候補なのか、お聞きします。
-村山市長
教育委員会で、今後、設置場所のほか、学校の形態、カリキュラムなどの詳細について検討を進めていくと聞いております。そのことを踏まえるとともに、まちづくりや地域の活性化などの観点も含めて検討することになります。旧馬場小学校については候補地の一つとなり得ますけれども、設置場所についてはそういった観点も含めて最終的に判断してまいりたいと考えております。
-山下議員
ぜひですね、こどもたちや保護者の声、そして地元の声を十分に聞いて、適正な過程を経て進めていっていただけるように求めたいと思います。
2023年、NPO法人多様な学びプロジェクトが「不登校のこどもの育ちと学びを支える当事者実態ニーズ全国調査」を行いました。「安心して休みたい」「不登校の偏見をなくしたい」というこどもの率直な思いとともに、不登校の初期から回復期までそれぞれの時期に求めていた支援や、支援の利用実態など、児童生徒と保護者のニーズも明らかにしています。そのニーズは、教育、福祉、医療と多岐にわたり、実際に利用した支援の課題も明らかになっていました。今後、金沢市が既存支援の拡充や新たな支援を構築するに当たって、やはり当事者のニーズを把握することは重要だと考えます。支援者も含めた当事者ニーズの調査を求めますが、見解を伺います。
-野口教育長
不登校児童生徒1人1人の状況に応じた多様な支援を図るために、各学校におきましては、これまでも教育相談票や1人1台端末等を活用して、不登校児童生徒の実態やその保護者の思いについて把握し、組織的・計画的な支援を行っておりますけれども、依然として不登校児童生徒数が増加している現状がございます。昨年度の実数から考えますと、これまで金沢市の増加率というのは国や県よりも増加の伸びが大きかったと思っています。ただし、ようやくその伸びが今年度、令和5年度の数値から参りますと、これは国や県よりもこの増加率がなだらかになってきています。ただ、増えているというその事実はあります。したがいまして、その事実をしっかりと受け止めなければならないというふうに思っています。先般、学びの多様化学校設置検討委員会から、不登校児童生徒の思いや要望等を把握するため、実態調査について参酌すべきとの方針がありました。これは非常に大事にしていかなくちゃいけないと思ってます。今後、実施に向けて検討してまいります。
-山下議員
ぜひ、実態とあわせてニーズも調査していただいて、必要な支援の整備とその支援につながる手立てをお願いいたします。先の全国調査では、不登校をきっかけに4割の保護者が収入が減ったと回答し、9割が支出があったと回答しています。行政に望むものにフリースクールなど学校以外の場に通った場合の利用料減免や、家庭への経済的支援が上位に挙げられています。私も保護者から、食費や塾代など出費が増えて経済的に追い込まれていたという話を聞いています。経済的な理由でこどもたちの選択肢が制限されることがあってはなりません。金沢市においてもフリースクール等を選択できる経済的支援を求めますが、いかがですか。
-野口教育長
本市におきましては、フリースクールへの理解を促進するために、令和4年度から不登校民間支援団体等連絡会に参加しているフリースクールが行う親子体験教室やものづくり教室などの体験機会を創出する活動に対し支援を実施しております。現在、フリースクールを選択したご家庭に対する経済支援については行っておりませんが、全国の教育長の会とか中核市の会に行きましても、この問題については時々意見交換をします。各都市、他の都市の状況をこれから踏まえながら研究をしていきたいと考えております。
-山下議員
先行の自治体はいくつもありますので、ぜひ研究をお願いいたします。そして経済的支援は家庭だけでなく、先ほども名前上がりました支援団体からも求めがあります。本市は、不登校民間支援団体連絡会設置されておりますので、支援の強化についても対話をできる場が既にありますので、積極的な検討をお願いいたします。
不登校支援については、多様な支援が重層的に必要です。ただ一方で、教員の長時間過密労働を解決せずに不登校の問題が解決できるはずがありません。先の全国調査で、こども・保護者ともに「学校に変わってほしい」という声が上がっており、学校のあり方が問われています。まずは少人数学級を実現し、教員の業務を減らしていくこと、そしてこどもや教員を追い詰めている過度な競争主義・管理主義からの転換を求めますが、見解を伺います。
-野口教育長
各学校の教職員は、不登校支援はもちろんでありますけれども、学校教育全般にあたりまして、全力でこどもの思いに寄り添った支援を行っていると思っております。そのためにも、引き続き、教職員が本務に専念するための時間を確保するために、時間外勤務時間、この縮減に取り組みますとともに、今おっしゃいました少人数学級の拡充につきましても、これは大事なことだと思っています。したがいまして、この根本には教員定数を改善していく必要があります。これは根本的なもんだと思ってます。したがいまして、全国都市教育長協議会や中核市教育長会等を通じながら、引き続き国に働き掛けていきたいと考えています。これからも、教職員1人1人がこどもたち1人1人の声に耳を傾けながら、より良い教育実践を積み重ねていくことができるよう、歩みを止めることなく、教職員の多忙な勤務状況の改善に向けて私は全力で取り組んでいきたい、そのように思っております。
-山下議員
ぜひですね、本当に先生たちの働き方も大事ですし、少人数学級でやっぱりこどもたちが本当に楽しい学びを、豊かな学びをする場を一緒につくっていきたいというふうに思います。ただ、やはり今の教員不足の多忙化ですとか不登校の問題、少人数学級など、さまざまな教育の課題が国の中では後回しにされて、企業が儲かる、こうしたICT教育に多額の予算がついていくということがこどもの最善の利益につながるとは思えません。教員がこどもと向き合う時間、そして教員の皆さんの健康ですね、こどもたちの学びの保障、こどもたちの健康が最優先にされるべきだ、そういう教育のあり方を求めて、私の全ての質問を終わります。