認定第1号 令和5年度金沢市歳入歳出決算認定について、認定できないことを表明し、主な理由を述べます。
2023年度は、5月に新型コロナウイルス感染症が2類から5類へ移行しましたが、その後も感染拡大は繰り返されました。また、異次元の金融緩和による円安や、ロシアによるウクライナ侵攻など世界情勢が不安定なもと、物価の高騰が続いています。そして1月には能登半島地震が発生し、市民生活に大きな影響をもたらしました。厳しい状況にある市民生活と生業を守り福祉の向上を図る、自治体本来の役割が問われる1年でした。
以下、反対理由を3点述べます。
第1に、長引く物価高騰のなかで、市民の経済的負担軽減がなされなかった点です。
国民健康保険や介護保険などの高すぎる保険料は、市民の暮らしにおいて大きな負担となっています。
国民健康保険加入者には、年金生活者や非正規雇用者が多く、加入世帯の7割が年収200万円以下という家計状況にあるにもかかわらず、保険料は他の医療保険と比べて約2倍の保険料になっています。国民健康保険財政調整基金は年度末で、21億9千万円余積み上がっています。基金を保険料の引き下げに活用することを求めるとともに、国へ国庫負担割合の引き上げを要望することを求めます。
介護保険においては、実質収支は6億6千万円余の黒字となり、介護給付費準備基金に1億1千万円余を積み立て、年度末の基金残高が29億5千万円余となりました。基金を活用して保険料の引き下げを強く求めます。
第2は、市民の理解と合意のないまま事業がすすめられた点です。
国は、マイナンバーカードをめぐる個人情報の漏洩や誤登録などトラブルが相次いでもなお、普及の推進や利用の拡大を進めています。従来の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードへ一本化するという突然打ち出された方針に対して、国民の不安と疑問が払拭されないでいるなか、2023年度もマイナンバーカード交付事業に1億2千万円余、支出されました。国の方針を批判することなく受け入れる本市の姿勢は問題です。
城北市民運動公園整備事業として、金沢スタジアムが2024年2月から供用開始されました。当初、改修計画だった市民サッカー場が、議会での議論や市民的な合意形成が不十分ななか、移転新築となり、本体工事費総額は82億2千万円とふくれ上がりました。今後も南駐車場の整備や旧サッカー場跡地に本田クライフコートを再設置するほか、多目的広場を設置するなど、こうした事業費の総額は100億円を超える規模と見込まれますが、市民の理解と同意が得られていません。
また、巨大な共同調理場建設についても、市民の理解と同意があったでしょうか。市内泉本町地内に8,000食規模の共同調理場建設が進められています。2025年8月完成予定ですが、開設されると、市内に4か所あった単独校調理場が吸収され、本市の調理場は全て共同調理場となります。さらに今後の計画では、駅西・臨海地区に1万1000食の大規模共同調理場を建設する計画があります。巨大な共同調理場ばかりの自治体は全国でもまれであり、食の安全・安心や食育の観点、また地産地消や災害時の対応などにおいても、単独校調理場を増やすことが望ましいと考え、計画の見直しを求めます。
宿泊税については、本来租税制度は担税力に応じた制度であるべきであり、宿泊税はその原則に沿わないものです。また税の使途については、一般会計の事業と変わらないものとなっており、税収が増えれば使途が拡大解釈され限りなく増えていくことは問題です。目的税として、その正当性と使途に対する同意が必要です。
令和5年度の最終補正で、被災宿泊施設改修支援事業費補助に5千万円、能登避難者食事支援費に9千万円、能登応援・震災復興キャンペーン事業で450万円と、合計で1億4450万円、宿泊税があてられました。本来であれば被災地、被災者支援費については、災害救助法が適用されるよう、国や県に要望するべきです。
第3は、大型開発と公共性が損なわれる事業が進められた点です。
金沢港建設事業については、多額の税金投入が続いています。大手企業コマツの工場を誘致や、クルーズ船の誘致のために岸壁改良工事や施設整備など、金沢港の港湾整備事業の全体計画額は2006年から2026年の20年間で463億6千万円であり、そのうち本市の負担金は88億にものぼります。市民の暮らしが厳しさを増す中で、一部の大手企業のために多額の税金投入が行われたことは認められません。
金沢スタジアムにおいて、本市で初めてネーミングライツが導入されました。施設維持管理への新たな収入源の確保を目的としていますが、税金を使用して建設している公共施設を、特定の企業が広告・宣伝に利用することは、公共性に大きく反します。また、本市のネーミングライツは、特定企業が提案した愛称に対して、議会の議決を必要とせず、市民的な合意形成をはかる手立てもないことは重大な問題です。 最後に、本市の税収は昨年度より増加したものの、長引く物価高騰の影響もあり、市民生活は厳しさが増しています。2023年度は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金32億9774万8千円と、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金 45億4453万9千円を活用し、合計80億1350万円余の感染症対策事業、物価高騰対策事業を行いましたが、市の一般財源の投入は1億4563万円余にとどまりました。新年度に向けて、物価高騰から市民生活と生業を守る積極的な政策と財政支出を打ち出すことを求めて、討論とします。