9月議会 討論 森尾よしあき

 私は、日本共産党市議員団を代表して討論を行います。
 わが党は、提出された議案第1号、議案第2号、議案第3号、議案第7号、議案第13号に反対であります。その主な理由について述べます。
 まず、国民健康保険にかかわって、保険料の計算方式を現在の「住民税方式」から「旧ただし書き方式」に変更するとして導入するための予算が計上されたことであります。
 本市の算定方式である「住民税方式」は、所得税から基礎控除・扶養控除・配偶者控除・社会保険料控除など各種の控除を引いて計算される住民税額を基礎にして国民健康保険料の所得割額を計算しています。今回変更しようとする「旧ただし書き方式」になると所得から基礎控除33万円しか引かれずに国民健康保険料の所得割額を計算することになります。これによって、低所得者を中心に各種控除を受けている世帯の国民健康保険料が大幅にはね上がることになります。
 今年4月から東京23区で「旧ただし書き方式」に変更されました。その実情を調査した東京都社会保障推進協議会の発表によると「年収が前年度より減ったにも関わらず、国保料が引き上げられたと答えた方が半数にのぼった」とアンケート調査結果を明らかにしました。
 住民と直接向き合う自治体は、保険料の急激な引き上げを避けるために「激変緩和」措置をとります。その財源は、一般会計から繰り入れる事になります。ところが、国は、国民健康保険財政から投入する仕組みを作り、今後、保険料軽減などのために一般会計から国民健康保険会計に投入することを「計画的に解消していく」方針を示しています。
 結局、国は、高齢化の進展などで医療費が増えれば自動的に保険料が引き上げられる仕組みにし、国民を医療費削減に駆り立てようとしています。
 今年は、国民皆保険制度がはじまって、50年です。いつでも、どこにいても国民が等しく医療を受ける事が出来るというこの制度が今後も国民のいのちを育む制度として輝き継続していくためには、国民健康保険制度が直面する課題を解決しなければなりません。
 第一に、保険料が払えない滞納世帯が445万にのぼり、5世帯に1世帯が滞納せざるを得ない状況となっています。本市でも加入世帯の20%あたる1万2,226世帯が滞納し、同じ様な実態です。
 第二に、保険料の滞納世帯に対して短期保険証が、全国で120万世帯、本市では、3,451世帯、資格証明書の発行が全国で31万世帯、本市では、1,261世帯にのぼっています。その結果、保険証をもたない方が増え、中には、医療機関に受診できないため、病気が悪化し、なくなるという事態が起こっています。
 第三に、国の負担が50%から25%に減り、派遣の打ち切りや失業など無収入の方が急増し、国民健康保険財政が一層困難に直面しています。
 以上の現状を打開し、すべての加入者に保険証を渡すと共に、国がしかるべき責任を果たし、財政の負担を増やすなど国民皆保険制度をより発展させていかなければなりません。
 次に、駅・武蔵北地区再開発事業にかかわる第三工区事業の予算と駅西広場再整備事業にかかわる工事請負契約の締結について反対であります。
 金沢駅から武蔵間を50mの直線道路で結び、その両側に5つの再開発ビルを建設するという駅・武蔵北地区再開発事業は、最初の再開発ビルであるライブ1が完成してから25年の歳月が経過しました。この間4つのビルが完成し、最後の第三工区のビル建設が始まろうとしています。地域の商店や地権者は、ほとんど地区外に移転してしまいました。
まちのにぎわいをつくりだすとしていた再開発ビルの計画は、つぎつぎに破綻し、保留床の売却が進まず、入居した店も次々に契約解除や転居が続いてきました。そして、とうとう本市は、再開発ビル建設を丸投げともいうべき、特定建築者を公募して進めるに至りました。
ところが、選定された業者は、第四工区の建設で撤退。その第四工区再開発ビルの一階は、当初から入居者が決まらず、空いたまま4年が経過しています。
最後の再開発ビルである第三工区は、マンションと福祉施設が入居する計画となり、この事業での商業施設は、ほとんどありません。賑わいのあるまちづくりとはほど遠い実態です。
この駅・武蔵北地区再開発事業に投ぜられる事業費は、約600億円にのぼります。そして、武蔵地下駐車場建設には、約48億円が投ぜられました。
さらに、5つの再開発ビルが完成しても、引き続き、空きフロアーを売却したり、ビルや地下駐車場を管理するために市民の税金が投入され続ける事になります。失敗のツケを市民の負担でまかなう事は許されることではありません。
 また、駅西広場再整備事業には、28億円が投ぜられることになります。新幹線の開通に合わせての事業と言う事ですが、最小限のリニュアルにとどめるべきとの指摘をし、見直しを求めてきました。こうした立場からこの議案には、反対であります。
 次に、金沢市税賦課徴収条例等の一部改正の中で、盛り込まれた証券優遇税制の減額を延長することに反対であります。
 証券優遇税制は、株式の譲渡益や配当への課税を従来の20%から10%に軽減するもので、当初の期限は、今年12月末であったものを2013年まで2年間延長するものであります。国際的にも税率は、30%前後と言う事からも、「金持ち優遇だ」との批判を浴びてきました。金融庁によると税率を20%に戻せば1260億円の税収増になることから、復興財源として法人税減税をやめることと共に、この証券優遇税率をもとの20%に戻すべきであります。
 次に、請願・陳情についてです。
  請願第1号治安維持法犠牲者への国家賠償を求める意見書の提出を求める請願についてです。これは、全国でこの運動をすすめている治安維持法国家賠償要求同盟の石川県本部から提出されたものです。
 この治安維持法は、戦前の1925年大正14年に制定され、「国体の変革」「私有財産制度の否認」を掲げた者を取り締まると言うものであります。その後、1928年昭和3年に改正され、罰則が「死刑」となり、国民の思想の自由を抑圧し、弾圧するものとなりました。
したがって、戦争が終わる1945年までの20年間にわたって、戦争に反対し、主権在民、言論、集会、結社など基本的人権を求めるすべての運動と思想が徹底的に弾圧されました。
逮捕された方は10万人に達し、拷問・虐待などによって虐殺されたり、病死したものは、約2千人にのぼりました。石川県においても犠牲者は200人以上に及んでいます。岡良一・元金沢市長、嵯峨保二(さがほに)・元北国新聞社長、浅井茂人・元金沢市議、作家の森啓(もりやまけい)、川柳作家の鶴彬(つるあきら)氏などがこの治安維持法の犠牲になったことは、広く知られています。二度とこうした事を繰り返してはなりません。
この請願は、平和と民主主義、基本的人権を後世に引き継いでいくという決意を明らかにすると共に、こうした法律によって、犠牲となった方々に対して国として謝罪し、賠償と名誉回復を求めるもので、わが党は、賛成であります。よって、委員会での否決に反対するものです。
請願第2号所得税法の見直しを求める請願についてです。この請願は、石川県商工団体連合会婦人部協議会から提出されたものです。
中小企業を支える家族従業員の働き分は、必要経費として認められていません。配偶者で86万円、その他の家族は、50万円だけがわずかに事業主の所得から控除額として認められているにすぎません。税法上では青色申告すれば、給料を経費として認められますが、同じ労働に対して青色申告と白色申告と差をつけること自体が大きな問題となっています。
ある自営業者の奥さんが、妻が事故などで仕事を休んだ場合、休業補償となる
所得証明がなく、結局配偶者で認められている86万円が所得補償になってしまう。と述べておられました。一人ひとりの働き分を正当に評価することは、まさに、人権を守ることであります。
よって、家族従業者の労働の社会的評価、働き分を正当に認めるよう、所得税法第56条を廃止することを求めるこの請願には、わが党は、賛成であります。すでに県議会でも可決成立し、国に届けられています。よって、委員会での否決に反対するものです。
次に、陳情第2号大徳地区活性化と賑わい創出事業に資する施設の設置についてです。
この問題は、平成19年12月市議会で、設置計画に反対する二つの請願書が全議員の賛成で可決しました。これを受けて当時の山出市長は、「議会の意思は市民の意思」と表明し、設置反対の議会の意思と同様の立場を表明いたしました。
従って、その後5回にわたって、同様の陳情書が議会に提出されましたが、いずれも否決や取り下げが行われてきました。したがって、もはや、明快な意思が表明されたものであります。
今回の駅西・大徳地区における競輪の場外車券売り場設置計画の場所から半径1キロ以内に大徳小学校と中学校をはじめ、2つの高等学校、3つの保育園があります。この地域は、文教地域です。さらに、車券売り場計画の場所から1.5キロ先には、今年5月に開館した海みらい図書館があります。したがって、こうした地域にギャンブル施設はふさわしくないと言うのが、多くの地域住民の声であります。
この陳情が出された事に対して、地域の町会や保育所さらには、反対の署名を集めてきた住民団体から相次いで、陳情に反対する要請書が届けられました。
今朝、大徳中学校PTA会長から要請文が届けられました。その文章を読み上げたいと思います。
「先日、新聞紙面に載りました大徳地区に於ける場外車券売り場設置について今般金沢市議会にて審議・採択される旨を知り、私達の思いを市議の皆様にお伝えしたく書面を提出した次第です。
大徳地区は近年宅地化が進み住宅が増え続け子供の増加が著しい地域であり先日は金沢海みらい図書館が開館するなど環境が整い、さらに学校と地域とが一致協力して教育に取り組む素晴らしい街だと思います。
近隣に大型商業施設が建設される中、多くの人達が大徳地区に人を呼び込む施設を求めていることは認識しており異を唱えるものではありませんが、子供を持つ親御さんの多くは車券売り場の設置により地域の治安の悪化や児童達への悪影響がないものかどうか不安を抱えております。
これまで私共は組織として中立の立場を守り反対の表明を出すことはしておりませんが、これをもって賛意を表するものではないと考えております。
つきましては、市議の皆様には前述のような点にご留意いただき熟議の上採択をされることをお願い申し上げます」
というものです。
場外車券売り場の設置に係わる認可を担当する経済産業省の担当者は、こうした状況の下では「許認可のハンコを押すのは無理です」と地元選出の国会議員に述べたと伝えられています。住民の合意すら得られていない場外車券売り場を設置することはできません。
地域振興や自転車競技の振興を述べたとしても競輪の場外車券売り場は、ギャンブル施設なのです。伝統ある金沢の発展にとってふさわしい施設とはとうてい考えられません。
我が党は、この陳情が求める大徳地区での場外車券売り場の設置に対して反対であります。よって、委員会が賛成4人、反対3人の表決を持って採択との決定に対して反対を表明するものです。
以上で討論を終わります。

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