金沢市議会6月議会 一般質問の全文
日本共産党金沢市議会議員 森尾 嘉昭
私は、日本共産党市議員団の最初の質問者として以下伺います。
質問の第一は、消費税増税を許さない世論と市民生活についてです。
「原発の安全神話に逆戻り」「原発依存社会に戻すのか」「公約と民意に背いた野田政権」「決断ではなく、消費税増税勢力による談合だ」など消費税大増税を決めた民主、自民、公明による3党合意そして、大飯原発の再稼働決定を行った野田政権に対する国民の怒りの声がとどろいています。
消費税増税に対してどの世論調査でも50数%から60%の方が反対しています。ところが、消費税増税を民主、自民、公明の3党で決めてしまい国会と国民に押し付けようとしています。こんなことは許されることではありません。
消費税を現在の5%から10%に引き上げたならこれだけで13.5兆円の増税になり、年収400万円の世帯では年間の消費税額が11万円から21万円へと10万円以上の負担増となります。 「社会保障と税の一体改革」という看板さえ投げ捨て、後期高齢者医療制度の廃止や最低保障年金制度も棚上げし、消費税大増税の実施になりふり構わず突き進もうという政治には未来はありません。 わが党は、消費税に頼らず、社会保障を充実し、財政危機を打開する「提言」を打ち出しました。その内容は、ムダ使いをやめ、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改正を行い、国民のふところをあたためる経済改革を進め、これによって、10年後には、40兆円の新たな財源をつくり、社会保障と財政危機打開を進めていく事ができるとしています。
市長!市民生活の現状、地域経済の深刻さを考えたとき、消費税増税はやめるべき と考えるものですが、その見解を伺うものです。 さて、暮らしと経済をよくしていくには、緊縮財政よりも経済の成長・発展をめ ざすという大きな改革に注目が集まっています。
本市は、これまで続けてきた大型開発事業は続け、呼び込み型の工業団地である テクノパークは、未だ4分の1が売れ残っているにもかかわらず、すぐ近くに新たな 工業団地を造成するなど地域経済の実態とはかけ離れた施策をすするとしています。ムダな大型開発事業は続け、市民生活と地場産業に関わる事業は削減、圧縮 する緊縮財政の方針では本市の経済も市民のくらしもよくなりません。
市長!市民の暮らしを応援し、地域経済を支える主役である中小企業、地場産業を 振興する事を基本とすべきです。本市の地域経済をどのように発展させるのか成長 戦略と具体化を計るべきです。市長の見解を伺うものです。
質問の第二に、志賀原子力発電所の再稼働と新防災計画についてです。
福島原子力発電所での事故によって、今なお約16万人の方々が避難生活を強いられ、その内、6万人は故郷を遠く離れた県外での避難生活を送っています。
原発事故は、住み慣れた故郷を奪い、人々のいのちと生活を切り裂いています。福島県相馬市の酪農家が昨年6月「原発さえなければ」と壁に書き残して自殺しました。「震災関連死」と認定されている方は約2000人にのぼり、その内、福島県が最も多い約800人となっています。 子どもたちの将来と日本の未来を考えたとき「原発ゼロの日本」をめざすという政 治の決断が求められます。そうしてこそ当面の電力需給の対応、自然エネルギーへ の切り替えも本格的に取り組むことができます。 ところが、野田首相は、国内にある50基の原子力発電所の稼働がゼロになるとい う状況を迎える中、「原発が停止したままでは日本の社会は立ちゆかない」と、大飯原発の再稼働を決定しました。必要な安全対策と実施は、数年後に先送りし、原発が立ちゆかなくなった時の予測も住民避難計画もないまま再稼働だけが強行されることは国民の命と安全を危険にさらすとんでもない対応であります。
福島の浪江町の町長さんは、「福島原発の事故原因の究明・検証も終わっていな い。安全対策も防災対策もないのに首相の政治決断で原発を再稼働することは認め られません。政府は、住民の命をどう考えているのか」と述べています。
市長!志賀原発についても原発の耐震設計審査指針で考慮すべきとされる活断層 が指摘をされるなどこれまでの安全対策では不十分であることが明らかとなってい ます。このまま再稼働することはあってはなりません。市長の見解を伺うものです。 ところで、去る6月9日県は、志賀原発で放射性物質が外部に放出される事故が起き たと想定した原子力防災訓練を実施し、30キロ圏内の市と町を対象に2200人が参加しました。対象となった区域の住民約1100人がバスなどで高岡市、輪島市、そして、本市へ避難する訓練などが行われました。本市への避難先は港中学校で、避難住民がバスで到着した後、体育館で受付、問診、被爆を検査するスクリーニングが行われ、除染対策等の訓練が行われました。 私も当日参加しましたが、真っ先にしなければならない被爆検査のスクリーニングが受付してから実施するなど問題の指摘が相次ぎました。避難先となった港中学校は、金沢港に近く、津波だけではなく駅西地区での液状化も心配されています。真っ先に避難しなければならない地域にある学校を避難先にするのは問題です。30キロ圏内の15万人の住民をどのように避難することができるか多くの課題が浮き彫りとなりました。
市長も会場に来られましたが、今回の避難訓練について学ぶべき点があれば見解 を伺いたいと思います。 消防局長に伺います。今回の避難訓練には、声がかからなかったようですが、志賀 原発で放射性物質が外部に放出される事故が起きた際には、どのような対応をされるのか明らかにしていただきたいと思います。福島原発事故では、情報がしっかり伝達されず、消防分団が避難、警戒に当たり、放射能に汚染されてしまったという事が問題となっています。こうした教訓をいかさなければなりません。
市長!本市が検討を進める新しい防災計画では、志賀原発で放射性物質が外部に放 出される事故が起きた際を想定した対策をどのように考えているのか明らかにして いただきたいと思います。
質問の第三に、災害廃棄物受け入れ可能性調査と今後の対応についてです。
環境省は、東日本大地震により発生した岩手、宮城両県の災害廃棄物の約20%に相 当する約400万トンを広域で処理するとの方針を打ち出しました。 しかし、これまでの処理は約16%程度にとどまっています。その原因と責任は、国と 東京電力にあることは、改めて指摘しておかねばなりません。また広域処理の場合、 放射能に汚染されていないか。安全対策が一番の問題となっています。
そこで、被災地での現状を調査するため、さる6月6日岩手県陸前高田市に升市議 と共に、行ってきました。 陸前高田市は、人口2万4千人、今回の地震によって、約1700人の方が犠牲となり、 約3400戸が被害を受け、多くが全壊となりました。市役所を中心とするまちなかは消滅状態となりました。市職員は、4分の1が犠牲となり、私どもの党の市議団長が避難誘導中に津波で犠牲となりました。 市は、今後8年間の復興計画を立て、町の再建に取り組んでいました。市内の災害 廃棄物は、148万トンと年間一般廃棄物の255年分に相当する量です。現在処理できたのは11%にすぎません。市内の第一次仮置き場は現在5カ所、海沿いにある二次置き場は、選別処理が行われ、処理施設へ運び出されていました。残りの137万トンの内、不燃物と土砂などの堆積物が87万トンを占めています。可燃物は、13万トンですが、その内1万3千トンを広域処理でお願いしたいとの事でした。 放射線分析の結果は、4月6日可燃物で、放射線セシウム134と137の合計で㎏あたり、 58ベクレル、柱材と角材は、不検出との事でした。検出下限の値は、㎏あたり、16ベクレルです。
宮城、岩手県が再調査した結果、広域処理の必要量が当初の400万トンから4割減り、247万トンに圧縮されました。
災害廃棄物の処理を3年間で終わらせたいとの方針ですが、住民の理解を得て安全に処理するためには、国が責任を持って対応すべきだと考えるものです。 広域処理が安全に行われるかどうか住民からの不安も続いています。それだけに、国に対して責任ある対応を求めるべきです。市長の見解を伺うものです。 第二に、安全基準や安全対策をどのように考えるのかという点です。環境省は、放 射線セシウムについて、㎏あたり240から480ベクレルを指標としています。輪島市は、これを100ベクレル以下としています。現地では、衣類などは㎏あたり、1700ベクレルの値を示したため、広域処理の対象とはしないとのことでした。 市長としては、どのような考えで判断するのか見解を伺うものです。 第三に、市長は、専門家からなる検討委員会が8月頃に議論の取りまとめを終え、 受け入れの可否を判断するとのことです。市民への説明や理解をどのような時期にどのような方法で求めて行かれるのか。市民にしっかり示すべきと考えますがその見解を伺うものです。
質問の第四に、中学校で柔道が実施される事についてです。
全国では、柔道事故によって、この29年間に117人のこどもが亡くなっています。また、重大な障害を負ったこどもは、この27年間で275人にのぼり、昨年1年間でも3件の死亡事故が発生しています。その内、2名は、部活動中に大外刈りを受け、頭部を打ち、亡くなっています。 ところが、文科省は、こうした重大事故の実態を把握せず、必要な対策を講じてきませんでした。1989年に閣議決定によって「生徒の体育活動中の事故に関する報告を廃止する」としたためです。そこで、本市教育委員会も国と同様に生徒の体育活動中の事故報告は把握せず、教訓が生かされないままとなっています。こうした状況を改める事が求められています。教員委員会の見解を伺うものです。また、昨年本市での柔道事故の状況はどのようなものか明らかにしていただきたいと思います。 今年から中学校で武道が必修となり、本市では、すべての学校が柔道を男女とも 実施する方針です。私は、この間この問題を取り上げ、生徒たちが安全に柔道の授業を受けるためには、第一に、柔道場の安全対策として、安全畳に切り替えること。第二に、指導者の問題です。柔道を教えたことがない教師が多いのが現状です。第三に、授業内容、カリキュラムの問題です。わずか10時間で大外刈りや試合形式を取り入れるには危険です。改善が必要です。現在どのような対策をとられてきたのか伺うものです。
私は、この2月フランスとの姉妹都市であるナンシーに出かけてきました。フラン スでは、柔道による重大事故は起こっていません。そこで直接指導者にお会いし柔道教室なども見学してきました。 フランスでは柔道連盟に55万人が登録し、5500のクラブに所属し、6500人の指導者がおります。その指導者は、国の認定制度によって、研修・試験を経て指導者として各レベルごとに教室やクラブの指導に当たっています。ここに日本との大きな違いがあります。ナンシー地区の柔道連盟の副会長であるマイヤーローランドさんにお会いしました。彼は、「フランス柔道は、試合をすること。楽しむこと。そして、こどもたちの事を尊重し、個性を伸ばすことを大切にしています」と語り、11歳以下は、試合に出れない。15歳からは、技に禁止事項があることを教えています。と語っていました。
生徒たちが安全に柔道を学び、そのすばらしさを享受できるように万全の対策をし なければなりません。保護者の中には、なぜ、女の子にも柔道を強制させるのか不安の声が出されています。 教育委員会は、こうした保護者や子どもたちの声をどのように受け止め対応される のか伺うものです。
質問の最後に、本市の人権・同和対策についてです。
封建時代の身分差別を克服し、人権と民主主義を確立することをめざす取り組みは 大切です。一方、「部落民以外はすべて差別者」として恫喝する人権侵害や利権を独占する等の対応には、国民的な批判を受けてきました。こうした中で、10年前の平成14年、国策としての同和対策事業は、終結しました。憲法と地方自治に基づく地域社会の発展をめざす新しい方向と取り組みがすすめられています。 ところが、本市では、未だに人権同和対策室が設けられています。そして、ここが 昨年、市民意識調査を行い、この3月に一冊の小冊子にまとめられました。 その内容には驚かされました。「同和問題について」という項目が設けられ、「かり に、あなたが同和地区の人と恋愛し、結婚しようとしたとき、親や親戚から強い反対を受けたら、あなたはどうしますか」という設問がおこなわれ、「同和問題を解決するために、行政等公的機関がすべきことはどのようなことだと思いますか」との設問がおこなわれています。 国は、すでに10年前に同和対策事業は終結したとしていることからいったい本市は、 どのように受けとめ調査を行ったのか。さらなる同和対策事業が必要だと考えているのか。市長から答弁を求めたいと思います。 第二に、国は、1987年に「地域改善対策啓発推進指針」を各都道府県に通達しました。 この中で、国又は地方公共団体の職員が確認・糾弾の場に出席することは行政の中立性からみても好ましくないとしています。 市長並びに教育委員会は、こうした国の指針について、どのように受けとめておら れるのか伺うものです。 第三に、憲法と教育基本法に基づく人権と民主主義の確立をめざしていくことは教 育の分野でも大切であります。ところが、同和教育の推進を掲げた「金沢市同和教育研究協議会」がつくられ、多くの教職員が半ば強制的に加入させられ、本市も年間60万円の補助を行っています。この協議会が、先月総会が開かれた際に、ある係争中の裁判をテーマに講演がおこなわれ、裁判の当事者までが話をしています。ある特定の解放理論と運動を持ち込むことは、公正・公平を持って進めていかねばならない教育とは相入れないものです。本市教育委員会の見解と今後の対応について伺い私の質問を終わります。