9月議会質問
金沢市議会議員 広田 みよ
わたしは日本共産党市議員団の一員として、以下数点にわたり質問いたします。
- 安保法案と戦後70年談話について
はじめに安保法案と戦後70年談話についてです。8月30日は歴史的な一日でした。国会前では12万人、本市でも土砂降りの中にも関わらず、犀川の河川敷に1800人が集まるなど、全国各地で、世代や立場を超えた、さまざまな国民が安保法案に反対の声をあげました。
衆議院では強行採決されたものの、すでに憲法違反ということは明白であり現在の参議院の審議においても、次々と内部文書が出され、政府が説明してきた「戦争を起こさないための法案」どころか、アメリカが起こす戦争に「切れ目なく」支援するための戦争法案であることが明らかになっています。
・このような状況で市長は、安保法案についてどう受け止めているのか、あきらかにしてください。
・また、戦後70年の節目に出された「安倍談話」は、「アジアへの侵略」「植民地支配」を自ら認めず、全体として、村山談話が表明した立場を事実上、投げ捨てるものです。
北東アジアの平和と安定を築く基礎となるのは信頼であり、歴史の真実に正面から向き合い、誠実かつ真摯に誤りを認め、未来への教訓とする態度をとってこそ、得ることができると考えますが、市長は、今回の「安倍談話」についてどう受け止めておられるかあきらかにしてください。
- 地方創生と金沢版総合戦略について
次に地方創生と金沢版総合戦略について伺います。
安倍政権がすすめるアベノミクスが、大企業や大金持ちにしか恩恵がなかったことがあきらかとなってきました。9月1日発表の2014年度財務省「法人企業統計」によると、資本金10億円以上の大企業の内部留保が、2年間の安倍政権下で27兆円も増え、300兆円規模に増加したことが示されたのです。一方で、GDPはマイナスとなり、消費増税や円安、物価の高騰、賃金の実質的な低下、年金支給額の削減などを背景に個人の消費が落ち込んだ結果です。
経済再生のためには国民生活を最優先にした政策への転換が一層求められることはあきらかです。
安倍政権のもとで、消費税増税、TPP推進、社会保障改悪がすすめられ、住民の福祉とくらしの破壊、地域経済の衰退、そして地方自治体の機能と役割の弱体化がすすんでいます。
こうした、深刻な事態の中で打ち出されたのが地方創生ですが、打開策を示すものとはなっていません。
国が地方創生の名のもとに、緊急対策としてすでに先行交付した事業について伺います。
全国で1700億円のうち、本市ではプレミアム商品券で4億6千万。また、子ども医療費の現物給付化、保育のスマイルクーポン、一時預かりなど、子育て支援で1億4千5百万が使われています。
まずプレミアム商品券について伺います。
・プレミアム商品券は、市内で20億円分を2か月で使い切るというもの。市民からはいろんな声が寄せられました。お得分の4億円が税金で賄われるにも関わらず、買える人だけが得をするというのは公平なのか。そもそも1万円をねん出できない方や、外で何時間も並ぶことができない方もいます。また、結局はまとめ買いか、大型のものを買うとすれば、大規模店舗へ行くのではないかという懸念もあり、長い目で見て本当に地域経済活性化につながるものなのでしょうか。
使用された結果を分析し市民に返すべきと考えますがいかがですか。
一方、子ども医療費の現物給付化や一時預かりなどは子育て世代に大変喜ばれ、特に子ども医療費の現物給付化は「窓口で一度支払うこれまでのシステムなら受診をせず、手遅れになったかもしれない」という報告があるほど、子どもの命を守り、また子育て世帯の負担を軽減するものとなっています。
・地方創生で国側は目新しさを求めてはいるものの、やはり本市としては、住民のくらしに密着し、かつ要望の多い事業に力を入れて取り組んだ結果ではないでしょうか。
そこで、各自治体の総合戦略提出によって追加で出されるという300億円について、本市では今、金沢版総合戦略を作成しているところだと聞いています。ぜひとも、安心してはたらき子どもを産み、住み続けられる戦略にすべきです。総合戦略に、子育て支援や若者就労支援、中小零細企業にいきわたる施策など住民のくらしに密着したものを盛り込むべきと考えますがいかがですか。
・また、アベノミクスや名ばかりの地方創生ではなく、市民のくらしに恒常的に使える地方交付税や国庫補助の増額こそ国に求めるべきと考えますがいかがですか。
・次に地方創生の流れにある、中枢連携都市圏構想について伺います。本市でも、有識者らによる懇談会が立ち上がりました。しかし、公的分野への民間参入や、公共機能の統合なども危惧され、どこでも住民が安心して暮らせる自治体本来の役割が、他都市と連携したから果たせるとは到底思えません。住民のくらしに今、求められるのは、「小さくても輝く自治体」であり、本当のコンパクトシティは国が言う生活圏に人を集めることではなく、どの地域でも働き子育てでき生活ができることをさすはずです。人口を増やすと銘打ってはじめた平成の大合併も、さらなる人口の減少を招く結果となりました。この都市圏構想は、本市を中心に大都市圏を形成し、道州制や北陸地方での拠点都市づくりをすすめるもので、どんな地域であろうと住民が住み続けられることを保障するものではないと考えますが、その見解を伺います。
- マイナンバー制度
次にマイナンバー制度について伺います。
赤ちゃんからご高齢の方まですべての方に強制的に12桁の番号がふられ、その方の社会保障や税情報などあらゆる情報を国が管理するというものです。市民にとっては、年に1回あるかないかの手続きが多少簡素化するためだけに、これまでの住基ネットとは桁違いの情報が拡大され、初期投資だけでも3000億円が費やされ、年金流出のようにセキュリティへの不安やプライバシーが国に管理されるという人権侵害など、たくさんの問題をはらんでいます。また、事業所が、労働者のマイナンバーを収集し源泉徴収票などに反映させるシステムを新たに構築する必要があり、民間にも多大な負担を強いるものです。
本市でも10月から簡易書留で通知カードを世帯ごとに送るとしていますが、すでに、預金口座番号など個人情報を聞きだそうとする不審な電話や訪問があったとの相談が各地で寄せられていますし、また消費税の還付を取得が任意のマイナンバーカードを使って行うとの案も示されるなど、混乱は必至で、今後も本市では多くの対応を求められることが予想されます。具体的に伺います。
・まずは、報道でもありましたが、届かない世帯に対してどう対応するのか?国の推計によれば金沢市では5%の1万世帯ほどに通知カードが届かない可能性がありますが、どう対応するのかあきらかにしてください。
・そして、これから任意ではありますが、ひとりひとりがマイナンバーカードをつくり、暗証番号をもつことになります。カードの管理だけでも不安があるのに、暗証番号をご高齢の方などがしっかり管理ができるのか疑問です。万が一、カードを落としたり、暗証番号を忘れた場合も、自己責任とせずにきちんと本市が対応できるのかあきらかにしてください。
・また業務の効率化とはいうものの、セキュリティ対策はもちろん、転入転出の際に、住所の裏書き業務が大量に発生するほか、あらゆる対応にせまられ、本当に業務が減るのかも疑問だという声もあがっています。
そんな中、国が、利便性をうたって推奨しているのが、コンビニのチケット販売などの機械を利用してマイナンバーカードによって各種書類を引き出せるというものです。本市では、この事業を採用して来年の5月からはコンビニでの住民票や戸籍などの書類を出せるよう計画していますが、経費については年間の1800万円と多額の委託料、1件引き出すごとに123円の手数料を市がコンビニに支払う必要があります。しかも、同時並行で市民センターの交付機を廃止しています。14機あったものがすでに11機に減り、今年度は額市民センターと金沢駅でのサービスがなくなります。
住民票、戸籍など市民の人権と権利に関わる業務は地方自治体が責任をもっておこなうべきであり、コンビニへの委託は、本来の地方自治体の役割や責任を投げ捨てるものではないですか。万が一コンビニにカードや書類を置き忘れたらどうするのか、安全面も心配です。コンビニへの委託はやめるべきではないですか。あきらかにしてください。
・そしてやはり、情報の漏えいや不正、なりすましなど、セキュリティへの不安は拭い去れません。年金の流出であきらかになったのは、セキュリティ対策について、サイバー攻撃する側も常に技術革新を行っており、それに対抗していくということは終わりのない「いたちごっこ」であり、完全に安全と言い切ることはできない、ということです。また、内部で人為的な不正が行われればいくらセキュリティを強化しても防げません。ひとたび、情報が流出すれば、人の人生を狂わせる大変な事態です。本市の住基ネットの利用率が3%にも満たないのは情報漏えいのリスクを回避したい市民の思いの表れです。しかも先日、制度がはじまってもいないのに、国会では「預金口座」と「健診結果」も盛り込むとする追加案まで可決をされました。これは、プライバシーや人権をも侵害するものです。本市は問題が起きた時、もっとも矢面に立つ立場です。市民の安全とプライバシーを守るため、マイナンバーについては国へ中止の声をあげるべきですがいかがですか。
- 第2庁舎建設について
次に第二庁舎建設について質問します。
国立競技場の建設費用が2500億円もかかるとして国民から批判の声があがりました。当初の計画策定については、JSC、政治家、官僚、ゼネコンなど一部の関係者で進められたと言われ、決定プロセスや情報開示がきわめて不十分だったことが指摘されています。公共事業のありかたが問われています。今、本市では南分室などを建て替えて、議会や行政機関、危機管理センターなどを入れるとして、第2庁舎建設を計画していますが、これについてもどこまでが本当に必要なのか、どんな規模にするのか、市民に明らかにしながらの議論が必要です。
・まず、議会棟については一昨年、全体で30億円かけたうちのかなりの費用をかけて、耐震化したばかりであり、現時点では新しい議会棟は必要ないという市民からの声があります。お子様連れでも傍聴できるような改善などは必要ですが、現在の施設で行うべきではないでしょうか?
・また、文化財である西外堀惣構えの真下を貫いてつくる本庁と第二庁舎をつなぐ地下道については、わずかな距離にしかすぎず、文化財保護の立場と費用がかかる観点からも必要ありません。第二庁舎等建設特別委員会の鹿児島市議会を視察する中でも、地下道はお金がかかるのでやめたという報告もありました。見直すべきと考えますが見解をあきらかにしてください。
・そして、全体の予算・建設規模についても問題です。
現時点での建築費用65億円は金沢市の予算規模からすると大変多額です。基本計画をみると、中核市ではなく政令市基準の適正規模に基づき、議員は45名分での試算です。議員数も減り、人口も増えない中でそのような基準がふさわしいと言えるのでしょうか。また、泉小学校の体育館で入札が不調であったように、今後、国立競技場建設などで、資材や労務費単価の高騰が予想されます。
危機管理センターなど、必要最低限の建物におさえるようとどめるべきですがいかがですか。
○家庭ごみの有料化
次に家庭ごみの有料化について伺います。
今議会冒頭、市長の所信表明で、今後、素案をまとめて廃棄物総合対策審議会にはかるとありましたが、市民はごみの有料化について、理解と合意を示してはいません。多くはこの計画の存在も知らされていないのが実態です。経済環境常任委員会では、再三各町会へまわるべきだと声があがっても、本市は呼ばれれば出向くという消極的な態度であり、本当に市民から新たな負担をとることの重大さをわかっているのかと感じています。
この間、委員会でも取り上げてきたことを再度伺いたいと思います。
・家庭系ごみは中核市43市中少ない順で8位と好成績ですが、事業系ごみについてはどうなのでしょうか?家庭系ごみが8位とわりだした環境省の同じデータを見ると、事業系ごみのことも載っていました。中核市43市中5位となっています。しかしこれは、少ない順ではなく多い順です。
・事業所には家庭ごみと違い、法的な責任がともないます。家庭ごみの有料化よりも、他都市より多い事業系ごみの課題をあきらかにすることこそ求められると思いますがいかがですか。
・その点で、市民等への説明会においては、家庭ごみと事業系ごみをわけて実態を明らかにしながら説明されるべきですがいかがですか?
・さらに、新幹線開業で飲食店や旅館など、観光業はお客さんが増え、事業系ごみが増える可能性が言われています。その対策についてもあきらかにしてください。
・また、本市がいう「家庭ごみの袋を有料化するとごみが減る」という、根拠について伺います。
市の説明では、「有料化すれば、ごみを減らそうというインセンティブがはたらく」、「他都市では減っている」ということを繰り返していますが、他都市の例ではさまざまな事業を並行して行っていたり、ごみと資源の把握の仕方が違っており根拠にはなりませんし、そもそも市民からお金をとることとごみを減らすことは別の問題です。仮に市民に負担を課せばごみが減ると考えるならば、それは地方自治体の行う福祉の向上とは言えません。根拠があまりにも短絡的ではありませんか。見解をうかがいます。
・そして、これまでも議論されている「税金の二重取りではないか」、という見方についてです。
このことについて本市は、市民からの公開質問状に対して、「得られた手数料は、ごみ処理費用に充てず、住みよいまちづくりに使用することを前提としているため、税金の二重取りにはあたらないと考えている」と答えています。
ごみ処理費用は税金で行うけれど、住みよいまちづくりは税金でおこなわないということなのでしょうか。ごみ処理費用も、住みよいまちづくりも、本来税金で行う仕事です。そして、ごみを減らす仕組みも、本来税金で行う仕事です。
・家庭ごみの有料化は、根拠をもった施策とは到底言えず、安易に市民に負担を課すもので、進めるべきではありません。あくまでも、環境施策として、大量消費大量廃棄をさせられている構造そのものの見直しと、市民の協力、事業者の責任と協力をもってすすめるべきです。家庭ごみの有料化は白紙に戻すよう求めますがいかがですか。
○教科書採択について
最後に教科書採択について伺います。
来年度から本市市立中学校24校で使用される教科書の採択結果が報告されました。
その中の、歴史の分野で採択された「育鵬社」の教科書は、史実や国際的な理解に基づかない内容を含んだ教科書と言われており、例えば「アジア太平洋戦争」を「大東亜戦争」と呼び、「アジアの独立に希望を与えた戦争」というような誤解を招くなど批判されているものです。
教育委員長にお尋ねします。
・戦後70年の歴史をふまえ、過去の政府の談話とも異なるこの教科書が戦後70年の教育にとってふさわしいと考えますか。教育委員会の見解をあきらかにしてください。
・議事録はまだ公開されていませんが、公開されている報告書に基づけば、現場の先生方の評価は別の教科書が高かったし、調査委員会から採択委員会にあがる過程で、育鵬社のみ減点もあったことはあきらかです。教育委員会において、最終的に採決で決まったとされていますが、そうであれば現場の声を覆すものと言えるのではないですか。見解をうかがいます。
・また、今後は透明性が保たれるように、教科書採択の審議過程はすべて公開を求めますがいかがですか。
・さいごに、市長に伺います。育鵬社版の歴史教科書は、独自の歴史観と見解を記述し、子どもたちに教えるものとしては内外から批判が続いているものです。日本民族や日本文化の優位性をことさら強調する一方で、中国・韓国などアジア諸国の歴史・文化などにはあまり触れず、アジア諸国を軽視しているとの批判を受けています。アジア太平洋戦争について、アジア諸国の独立につながったものとして、日本の加害責任、侵略性について否定的にとらえています。
市長。世界の交流拠点都市をかかげる本市の市長として、このような教科書を、密接な関係をもつ、本市の姉妹都市、蘇州や全州の方々に自信をもって見せることができるのでしょうか。あきらかにしてください。
以上で質問を終わります。