2019年度3月議会 森尾議員一般質問 3・12

森尾議員

-森尾議員

私は日本共産党市議員団の一人として、三つの課題について質問いたします。

ガス・発電事業について

最初に、本市ガス・発電事業の譲渡方針についてです。市長は本議会の提案説明の中で、本市ガス・発電事業について「民間事業者に令和4年度を目途に譲渡したい」と述べました。この問題について私は、昨年の9月と12月議会で取り上げました。12月議会で私は「100年近くにのぼる本市ガス・発電事業について公営事業としての役割は終えたと考えるかどうか」と質問し、市長は次のように答弁されました。「公営企業としての役割が終わったとは思っていません。やはり公的な関与というものも必要だ」と述べました。そこで、市長が述べた公的役割とはどういうものか。その考えをお聞きしたいと思います。

-山野市長

 一番は市民の安心感であるというふうに思っています。あり方検討会の答申の中にも市民の安全・安心の確保、人材や技術力を有する市内事業者の活用、技術・技能の伝承などに十分配慮をし、市として円滑に事業を継承する責務があるというふうに考えています。市からの出資や法に基づく市職員の派遣、経営状況の確認などを通じて、私は市民に安心感を持ってもらって公としての一定の役割を果たしていかなければいけないというふうに思っています。

-森尾議員

 本市企業局が2016年に今後10年間にわたる経営戦略方針を打ち出しました。その中で、ガス、水道、公共下水道、発電、工業用水道の5つの事業について、地方公営事業として「公共の福祉の増進」を本来の目的に、経済性の発揮に努めながら事業の持続的な成長発展に努めてきたと、こう述べています。安定した事業の継続、安価な料金の維持、そして何よりも安全・安心を提供するというのが本来公営事業としての大きな役割だと考えます。改めて市長の見解を伺います。

-山野市長

 ガス・発電事業はまさに市民生活のライフラインであります。安全で安心、そして安定ということが私は大切なんだというふうに思っています。ただ、このことは公営であろうが民営であろうが市民のライフラインの中で私は果たすべき役割なんだというふうに私は思っています。そんな視点も踏まえまして、譲渡先の選定に当たりましても安定供給や保安の確保、サービスの向上に加えまして、ガス料金は一定期間現行料金を上限に設定するなど選定要件として定め、市民の安全・安心の確保を図ってまいります。

-森尾議員

 公営事業としてもう一つ大きな役割があると考えています。地域の雇用や所得、消費の源泉となり、公共発注を通じて仕事出しを行い、いわば地域経済への貢献という点では大きいものがあると考えています。これは利益を最優先し、市場経済のなかでの民間企業とは大きく異なる点だというふうに私は考えます。公営事業として本市の地域経済を支えていると、こういう点も大きな特徴であり大切だと考えていますが、その点は市長のどうお考えでしょうか。

-山野市長

 管工事であったりだとか保守点検であったりだとか、市内の事業者に力を発揮していただいているところでありまして、そのことが地元の雇用の確保であったりだとか経済の循環に繋がっているんだというふうに思っています。譲渡先の選定要件といたしましても、本市に本社をおく新設の株式会社ということを期待をしているところでありますし、積極的な地元雇用の創出も促していきたいと思いますし、市内事業者との連携ということも進めていきたいというふうに思っています。地域経済への貢献に資するということを求めていかなければいけないと思っています。

-森尾議員

 公営事業の民営化が、全国で今なぜ進められているのかという点について。安倍内閣が掲げる成長戦略、いわゆるアベノミクスによる公共サービスの規制緩和、新たな市場を民間に開放するという方針に基づいて、これが進められてきているからです。2016年12月19日、安倍内閣の下で開かれた未来投資会議の第3回会議が開かれました。その中で「民間にできることは民間に」を主張し、郵政3事業や道路公団などの民営化と規制緩和を強く主張してきた竹中平蔵氏が次のような主張をしました。「成長戦略をさらに進めるうえで、『公的資産の民間開放』は最重要テーマだ」として、上下水道を取り上げ、民間への市場開放を行うよう強く求めました。その後、水道事業への民間参入が可能とする法改正が行われ、次々に民間参入が進められてきました。市長。公営事業の民営化は、こうした安倍内閣が進めている成長戦略として『公的資産の民間開放』との方針であると言えます。あなたも、こうした方針に従って進めていくおつもりですか。その見解を伺います。

-山野市長

 昨日も企業局管理者が答弁いたしましたけれども、安倍内閣以前からガスや電気の自由化が進められてきているところであります。法律ができたことによって大きく動いてきたという側面はありますけれども、誰かの内閣だから特別変わったというふうに私は認識はしていません。やはり今回の譲渡の理由は、何度も同じことを申し上げて恐縮ですけれども、やはり法律が変わってルールが変わったということ、そして利用者に対して自由化のメリットを享受できるような環境を整えていかなければいけないということ、そして公正・公平な競争であり共存というものを求めていかなければならない、そういう視点からあり方検討会からもご提言をいただきまして順次手続きを取りながら進めてきているところであります。

-森尾議員

 公営企業管理者に伺います。本市企業局が2016年に今後10年間にわたる経営戦略方針を打ち出しました。その中で「現在企業局が所管する5つの事業(すなわち、ガス、水道、公共下水道、発電、工業用水道)には、公共性及び公益性の確保が求められるため、今後も引き続き企業局が経営する」としているわけです。これは、市民と議会に示した企業局としての基本方針だと考えます。その点、公営企業管理者の認識を伺います。

-平嶋公営企業管理者

 経営戦略はガス・発電を含む5事業の適切な経営を通じまして豊かな市民生活に貢献することを理念として、平成28年3月策定したものでございます。しかしながら、その後のガス電気の小売り全面自由化によりまして、事業を取り巻く環境が大きく変化してきたことから、局内におきまして調査・研究を進めますとともに、今後の経営形態のあり方に関して検討委員会からの答申を踏まえ、両事業を譲渡する方針を固めたものでございます。

-森尾議員

 こうした今後10年間にわたる方針と、今回示された本市ガス・発電事業について民間事業者に譲渡するとの方針とは相容れないものです。とすると、企業局自らが2016年の今後10年間にわたる経営戦略方針は、撤回・破棄したという意味で受け止めてよいですか。

-平嶋公営企業管理者

 ガス発電事業につきましては、あり方検討委員会からの答申を重く受け止め、経営形態の見直しは避けることができないものと考えております。公営民営を問わず、エネルギーサービスを通じて豊かな市民生活に貢献する、そういった基本的な考えというのは共通であると認識しております。

-森尾議員

 議長もお聞きになったように、答弁になっていないんです。私は、2016年に示された方針は撤回・破棄したのか、と問うたんです。答弁になっていないと思うんですよ。改めて答弁を求めます。

-平嶋公営企業管理者

 ガス発電事業を除く3事業につきましては、今もその経営戦略の理念のもとに運営をしております。

-森尾議員

 であるならば、経営戦略方針を見直すためにまた再検討をするというのが本来企業局として取るべき取り組みではないですか。

-平嶋公営企業管理者

 経営戦略2016は、2025年度までの計画でございますけれども、事業環境が大きく変化した場合等には随時改定をすることとしておりまして、ガス発電事業の廃止に伴い必要な見直しを検討することとなります。

-森尾議員

 10年間に渡って公営事業として経営するというふうに打ち出し、これについては議会と市民に約束しておいて、一方状況が変わったと称してあり方検討会を開き、今回の民間事業への譲渡を打ち出すというのは筋が通らない。ならば経営方針について撤回したのかといえば答弁はしない。であるならば、経営戦略方針を見直し再検討するのが筋ではないですか。なのにあり方検討会を作って、今回の「経営については譲渡する」という方針を突き進むというのでは、当初約束をして議会にも示した経営戦略方針というのは一体何だったんですか。改めて求めたいと思います。

-平嶋公営企業管理者

 公営企業を運営するに当たりまして、当然事業の計画を立てながら実施をしていくということは基本であります。ただ先程も申しましたが、事業環境が大きく変化をした場合にどのように対応していくか、それはやはりその時々の状況に合わせて有識者等のご意見もお伺いしながら慎重に判断をしていくことが求められるものでございますので、今回、昨年開催した検討委員会からの提言を重く受け止め、様々な議論も踏まえ、両事業を株式会社へ事業譲渡するという方針を固めたところでございます。それに伴いまして両事業が廃止ということになれば、現在の経営戦略を改定するということになります。

-森尾議員

 ではなぜ、本市が全国初めてとなるガス事業と発電事業をセットで譲渡するのか。この点で、みなさんが示したコンサルタントの報告によると、本市発電事業において、売電価格の見直しにより収益が大きく増加し、事業価値が確保できる。したがって、ガスと発電事業をセットで譲渡すべきというのが、このコンサルタントの報告となっています。この点について、説明を求めたいと思います。

-平嶋公営企業管理者

 あり方検討委員会からの答申におきましても、電力ガスを合わせた総合エネルギー市場が進展する中で、株式会社で両事業を一体運営することによりましてサービスの多様化が図られ、市民サービスの向上やガス事業の営業力の強化、再生可能エネルギーの地産地消等を実現することが可能となるとのご指摘も踏まえ、両事業を合わせて事業譲渡することとしたものでございます。

-森尾議員

 発電事業は5つの発電所、ダムと発電所をもって運営されているものです。そのうちの1つ、上寺津発電所について、新年度の予算でこの発電所のリニューアルをするために10億円の予算が計上されています。説明を求めます。

-平嶋公営企業管理者

 上寺津発電所は運転開始から54年が経過しておりまして、老朽化した水車等、いわゆる発電の基幹の設備になりますけれども、水車等を更新するものでありまして、機器製作に時間を要しますことから平成30年度から当初予算におきまして債務負担行為を設定させていただき、令和2年度までの3年をかけて実施をしているところでございます。

-森尾議員

上寺津発電所のリニューアルは、全体計画で13億3千万円を投じて、今年度10億円の予算を計上し、終了します。本市の発電事業の企業債残高は、現在ゼロです。そして、全国的にも安い価格で売電している契約が令和7年に完了します。その後、全国平均的な価格で売電契約をすれば、現在2億7千万円くらいの黒字が、年間15億円程度の純利益を継続的に確保できるというのが、コンサルタントの示した内容です。こういう状況から考えると、発電事業を民間に譲渡する必要はないんじゃないですか。見解を求めます。

-平嶋公営企業管理者

 発電事業は現在のところ、ご指摘のように経営は安定しております。ただ、国の制度改革に伴いまして電力会社との売電に係る長期契約が終了した後は、一般競争入札へ移行しますことから、売電価格が変動し経営が不安定化するおそれがあると見込んでおります。また、あり方検討委員会からの答申におきましても、電力小売りの地域独占撤廃により、卸供給のみでは地産地量が困難になり、地方公営企業としての役割が希薄化しているということも指摘をされているところでございます。こうしたことから、事業環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できる株式会社に事業譲渡することで、事業の持続性の確保に繋がるものと考えております。

-森尾議員

市長、今お聞きになった通りです。市長はこの問題について「スピード感をもって」ことをすすめると述べました。しかし実態は、譲渡を受ける民間事業者が早く譲渡をしてくれと、利益の拡大を進めたいと、こういう民間事業者の希望に応えたものが、市長のいうスピード感ではないですか。本市のガス・発電事業が100年近くにわたって継続されてきました。私は、これは市民の財産であり、次の世代に引き継ぐべきレガシーだと考えています。私は、あらためて今回示している民間企業への譲渡という方針はやめるべきだと考えますが、この問題についての市長の見解を求めます。

-山野市長

 まず誤解があるようですので訂正させてください。私はどこかの企業から頼まれているわけではありません。法律が変わりました。ルールが変わりました。利用者の皆様に、他の多くの自治体と同じように私はメリットを享受させる、そんな環境が必要だというふうに思っています。管理者も申し上げました、これまでの議会でも同じことを申し上げていますので重複は避けたいというふうに思いますが、私はこれは大切な案件だということで議会の皆さんにお諮りをしているところであります。

歌劇座の建替えとまちづくりについて

-森尾議員

 質問の第二に、歌劇座の建替えと街中でのまちづくりについて伺っておきたいと思います。市長は昨年3月議会でこの問題について、「まずは財源の確保を最優先に予算の平準化も図っていきながら十分に時間をかけて検討していく必要がある」との見解を述べました。今回の市長の提案説明では、「金沢歌劇座の建替えにつきましては」と述べ、すでに「建替えありき」という前提から「技術的検討に入る」ことを表明しています。しかし、現在地での建替えとは表明していません。市長の真意を伺います。

-山野市長

 午前中の議論でも出ましたが、提言をお受けをしました。またこれまでの議会でも申し上げておりますけれども、明年度は懇話会の提言を受けまして現地での建替えを念頭に、課題の解決に向けて技術的な検討を進めていきたいと思っております。

-森尾議員

 市長は「先月のあり方検討懇話会の取りまとめ」を自らの方針転換の根拠にしておられるようですが、そこで、この取りまとめの内容について伺います。市長が2月5日に受け取られた文書には次のように記載されています。「3つの機能を満たすため、整備区域等に係る課題の解決を図った上で金沢歌劇座を建替えるべきである」これが、取りまとめた文書となっています。いわば建替えには条件が必要だと明記され、その解決が先だというのがこの内容となっています。そこで、建替えるために解決が先だとするその課題とは一体なんですか。

-山野市長

 あり方検討会から課題の提言をいただきました。ひとつには、整備区域のことであります。高さ制限であったり、敷地内での建物配置等の対応が必要になってきます。ふたつには、周辺エリアにおける位置付けであります。歌劇座があって本多町芸術ゾーンと私は普段から言っておりますが、あのエリア全体の価値向上をどうやって図っていくことができるのか、多くの文化施設、学校もあります。その中であのエリアの価値を図っていくためにはどんなことが可能なのか、そのことであります。三つめには、その他の課題としていくつか挙げられております。ソフトの検討であるとか財源の確保というのも大きな課題だと思っております。そんなことが提言の中でいただいているところでありまして、しっかりと議論していかなければならないと思っております。

-森尾議員

 そこで、建替えのために解決しなければならない課題のうち、ふたつの点をお聞きしたいと思います。ひとつめは建物の高さ規制です。現在この区域では、建物の高さは18mとしています。景観を守るために市民に示してきた高さ規制を勝手に緩和するというのはとんでもないと考えます。第二に、財源の確保の問題です。この点について市長は、建替えには100億円を超える事業費が想定されるというふうに述べていますが、この認識に変わりはありませんか。

-山野市長

 高さのことにつきましては懇話会でもいろいろ議論されたというふうにお聞きをしています。必要な建物の規模を設定したうえで、地下化など規制に対応していく調査検討が必要だと考えています。財源の確保につきましては、100億円を超える整備費が必要だというふうに認識をしているところでありまして、ただやはり大変大きな金額でありますので、予算の平準化であったり財政の健全性を担保できるような整備スキームというものを検討していく必要があると思っています。

-森尾議員

 オペラを上演する機能をもった施設を建設するとした場合に、どの程度の事業費がかかるのかという例として、例えば高崎芸術劇場は、2027席の施設として2019年に建設され、建設事業費は260億円です。熊本市のホールは、2300席で2019年に建設され、投じた建設事業費は303億円です。石川県立音楽堂は、2001年に開設され、邦楽ホール720席、コンサートホール1560席、交流ホールとなっています。建設事業費は250億円です。こうした点から、100億円程度ではオペラを上演するホールは建設できません。市長、改めて見解を伺います。

-山野市長

 100億円程度だとは申し上げておりません。100億円を超えるものだというふうに認識をしております。まだ具体的にそこまで議論をしているところではありません。課題としていただいているところでありますので、しっかり受け止めていかなければいけないと思っております。

-森尾議員

そこで、現在地での建替えが無理ならば、香林坊の日銀が移転した跡地で建替えたらどうかとの議論が起こっています。街中の回遊性を高めるまちづくりだとしています。市長は、この議論についてはどんなふうに思っていらっしゃいますか。

-山野市長

 私のところにも、まじめに真摯に考えられたいろんなご意見をいただいています。現地での地下化ということであったりだとか、今のお話であったりだとか、また人様の地面ではありますけれども別な場所が良いのではないかだとか、いろんなご意見をいろんな方が真摯におっしゃっているというのは良く理解しているところではありますけれども、まず私どもとしましては、私どもが議論をお願いした懇話会、検討会からいただいた案に真摯に対応していくことが、一義的に必要なことだというふうに思っています。

-森尾議員

 金沢歌劇座の問題を巡って、市民からは現在の施設を活用することを望んでおり、建替えという声はあまり聞こえてきません。そこで、この施設が観光会館としてスタートして60年が経過し、市民に親しまれ、利用されてきました。現在の歌劇座は、平成22年に大規模な改修が行われています。現在の歌劇座は、年間32万人が利用し、そのうち学校行事に43%、コンサートに27%となっています。こういう状況からみると、この施設そのものについては引き続き市民に親しまれる施設として、大きな役割を担い、発揮していると考えますが、改めて市長の見解を求めたいと思います。

-山野市長

 ご指摘のように、今も多くの市民の皆さんに利用していただいています。中学生や高校生の合唱であったり、吹奏楽の発表であったり、ママさんコーラスの全国大会でも先般ご利用いただきました。この提言の中にも、やはり市民の様々な文化芸術活動を発表披露する場、さらには交流する場という機能も添えた上でご提言をいただいているところであります。どういう形であろうが、私はやはり多くの市民の皆様にご利用いただける、そういうものが望ましいのだというふうに考えています。

生活保護行政と資産調査について

-森尾議員

 最後の質問は、生活保護行政と資産調査について伺います。

 昨年本市は、生活保護受給者に対して、「資産申告書」なる文書を送り、記載、提出を求めました。これは、いかなる目的と法的根拠をもって行ったのか。伺います。

-山田福祉局長

 資産申告書は、平成27年4月に改正施行されました、国の生活保護法による保護の実施要領に基づき、福祉事務所が生活保護世帯の預貯金等の資産状況を適切に把握するため、12ヶ月毎に提出を求めるものでございます。これに基づき実施をしております。

-森尾議員

 これを受け取った方から、貯金があったら生活保護が打ち切られるのか。意味が分からないし、どのように対応したら良いのかわからない、など不安の声が寄せられています。この「資産申告書」の提出は、任意の協力であり、提出する、しない、によって、不利益が生ずるものではないと考えますが、その見解を伺います。

-山田福祉局長

 資産申告書の提出は預貯金の把握が目的であり、提出されないことが直接生活保護の停廃止に繋がるものではないというふうに考えております。なお、資産申告書の提出は国の実施要領に基づき全ての生活保護世帯に対し求めているものであります。任意の協力ではないというふうに認識をしております。

-森尾議員

 生活保護行政は、法定受託事務として本市社会福祉事務所がその任にあたり、憲法と生活保護法に基づき、進められています。その点で、今回の資産申告書をめぐって、過去の判例や、国の見解について確認しておきたいと思います。最低限の生活を保障するとして支給されている生活保護費から食べるものまで削り、保護費を原資とした預貯金は、収入認定せず、その保有は、認められてきました。これは、1993年4月23日秋田地裁における加藤訴訟の一審判決で示され、その後確定しました。生活保護実施要領にも明記されてきました。こうした点について、本市は、当然認識していると思いますが、見解を求めたいと思います。

-山田福祉局長

 資産申告書の提出により、預貯金があった場合は訪問等により個別の聴取を行っております。その結果、預貯金の使用目的が生活に必要な備品の買い替えや子どもの進学費用など、生活保護の主旨に反しないと認められた場合には、収入とは認識しないと考えております。

-森尾議員

 ところが、本市の社会福祉事務所は、重大な誤りを行いました。本市の生活保護受給者が預貯金を保有していることを理由に、一方的に生活保護を打ち切ったのです。これに対して不服審査請求が行われ、その結果、2015年2月10日、石川県知事は「本市社会福祉事務所長が決定した保護廃止処分の取り消し」を行いました。その後、本市社会福祉事務所は、この方の生活保護を打ち切った日にさかのぼって生活保護を開始しました。手続き的な誤りが指摘されたわけですが、預貯金について、原資が生活保護費などであり、法の趣旨目的に反しない限り保有を認めるというこれまでの過去の判例や厚生労働省の見解に沿った対応を改めて求めたものです。本市は、こうした立場にしっかり立ち、今後の行政にあたらなければならないと考えます。その後、どのような対応が行われてきたのか、明らかにしていただきたいと思います。

-山田福祉局長

 生活保護世帯が保有しております預貯金につきましては、生活保護の主旨目的に反していないかどうか、個々のケースごとにしっかりと精査をして収入として認定するかどうか判断を行っているということでございます。

-森尾議員

 誤りを認めて正していくというのが、取るべき対応ではありませんか?先程示したように、皆さんがとった決定が誤りだったと、知事が皆さんの決定の取り消しを行ったわけです。ですので、この決定について真摯に誤りを認め、法の主旨に沿って行政を運営するという立場に立つべきだと思いますが、改めて伺っておきたいと思います。

-山田福祉局長

 繰り返しになりますけれども、その後は生活保護世帯の預貯金につきまして、いわゆる主旨目的に反していないかどうかということを個々のケースごとにしっかり精査をさせていただき、収入として認定するかどうかの判断を行っているということで、適切な業務を行っているということでございます。

-森尾議員

適切じゃなかったから、知事が処分をしたんですよ。そんな曖昧な対応を取ったらいかんですよ。

生活保護法第61条は、生計の状況に変動があった場合に届出の義務を課していますが、機械的定期的に届出義務を課したものではありません。28条1項には、一般抽象的な調査権限を福祉事務所に認めてはいません。したがって、個々の状況と内容によって福祉事務所が判断をするというのが法の主旨です。そこで、今回「資産申告書」を送り、記載、提出を求めたこの行為は、私は重大だと考えます。資産調査については、法の趣旨に沿って生活保護の申請の際に具体的・個別的な事例に応じて資産状況の把握を行う、これが法の主旨なんです。したがって、本市が行ったように、網羅的に行い提出を求めるというのは、法的根拠はありません。過去の誤りにただして、しかと法とその精神に基づいて運用するというのが法の建前だと思いますが、改めて伺っておきたいと思います。

-山田福祉局長

 生活保護業務は法定受託事務でございます。生活保護法はもとより、生活保護による保護の基準や、生活保護法による保護の実施要領等の基準により、事務を行っておるものでございます。今回、資産申告書の提出につきましては、12ヶ月毎に書面で提出を求めるという国の実施要領に基づき行っておるものでございます。よって、全ての生活保護世帯に対して求めていくということでございます。

-森尾議員  しかも、本市は、この調査書を独自に作成して、網羅的な調査を行う。この行為はやめるべきだ、ということを指摘し、憲法と生活保護法に基づく行政を進めるよう、改めて求めて質問を終わります。

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